「田口の部屋」カテゴリーアーカイブ

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6月22日の将棋

1ヶ月間更新がストップしていたが、その間一瞬だが田口のレートが凄いことになっていた。なんと将棋倶楽部24でのレートが四段になったのである!

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参考図:将棋倶楽部レートの世間のレベル

ただ四段(レート2,100以上)になったのはほんの一瞬で2,000をやや下回るレートにいることが多い。実際の田口の実力はそんなものだろう。いずれは自己最高レートを再び更新できるよう精進したい。

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図1:29手目 先手▲5六銀を決めない振り穴を採用

今回は15分制の対局で田口は後手である。以前本ブログで振り飛車穴熊は早めに▲5六銀を決めるのが広瀬八段の考え方でそれがアマチュア間にも浸透していると解説したが、今回の相手は広瀬八段の教えを守っていない。

この指し方の場合、後手としてはすぐに△4四歩を伸ばさずに△4四銀~△3三銀と銀を穴熊に引きつけるのが良いのだが、ついついいつもの穴熊のクセで△4四歩と伸ばしてしまった。

こういうミスをしないよう、相手の手を見てからちゃんと考えて指すクセをしっかりつけたい。

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図2:53手目 見えなかった”じっと”の好手

最近の田口は”じっと”溜める手を意識している。直接的ではなくて次に活きる、という手が指せれば攻めの幅がグッと広がるので、そういう手を指せればと思うのだが、この局面で考えても考えても思い浮かばず△8六飛と飛車を切り飛ばしてから△8八角と迫った。これで全く悪いというわけではないのだが、対局後激指先生の示した最善手が△4五歩という手だった。これは次に△3三角と角を活用する手を見せつつ△4六歩の狙いも後に生じる。

田口はこういう手を指したかった。やはり激指先生の中盤感覚には脱帽するばかりである。

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図3:72手目 飛車を取れない難解な終盤戦

田口は駒損しながらも相手の守りの金を剥がして飛車取りに角を成った。しかし本局の相手の次の一手が好手で難解な終盤戦が始まった。

▲1五桂。穴熊攻略は銀の頭の位置を攻めるのが有力なことが多いが本局も同様である。ここで田口も時間を使ってしっかり読みをいれたが、例えば単純な攻め合うと△4八馬▲2三桂不成△同銀▲同香成と進むと先手玉は詰めろで無いのに対し、後手玉は△2ニ銀から長手数だが詰みなのだ。

つまり▲1五桂に対しては受けなければならない。本譜では▲3二金打を先に打ってしまったが、単に▲3三金の方が良かった。細かいところだが気をつけたい。

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図4:79手目 怪しげな△6五角にビビる田口

図3の局面から少し進んだところで、先手としては、ずっと飛車取りなのは気持ち悪かったのだろう。飛車を逃げてしまったが、これで攻守逆転して後手ペースになったと思う。つい手拍子に△3八金と打ってしまったのは反省(もっと好手があった)だが、△6五角というひと目には理解できない手が飛んできた。

どうせ飛車取る手は間に合わないんだろう、と相手を信頼して△2四歩という手を少考で指してしまったが、もう少し△4九金と飛車を取る手を考えてから指した方が良かった。(ただ飛車を取る手は超難解な順が続く。結果的には△2四歩は最善手。ただ△3八金を決めずに先に指したほうがさらに良かった。)

ちなみに△2四歩という手は香車の多段ロケットに対して効いてる位置を1マスずらして威力を弱める受けの手筋である。

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図5:100手目 2七の地点を狙い返す

図4と図5を見比べてほしい。図4の時点では2三の地点を狙っていた香車×2と桂馬が逆を向いて2七の地点を狙っている。まさに「寝返った」という感じで面白い局面になったと思う。

この局面は後手が完璧な堅陣なのに対し、先手の穴熊は薄く、受けが難しい。この数手後に投了となった。

・・・本局は相穴熊の激戦となり、一手進む度に詰むまでの速度計算をしなければならない難解な終盤戦となったがしっかりと受けることによって優勢を築くことができた。

ただ、本ブログには書いてない部分での序中盤で反省すべき点がいくつかあるのでそれらを今後の将棋に活かしていきたいと思う。

 

5月18日の将棋

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図1:25手目 後手四間飛車穴熊に対し居飛車穴熊で対抗

今回田口は先手である。今回の相手は四間飛車穴熊戦法を採用してきた。この戦法は広瀬八段が一時期採用して勝ち星を多く稼ぎ、王位のタイトルを取る原動力となった戦法だ。この戦法に対し、田口は堅さ負けしない穴熊で対抗することにした。

穴熊囲いというのは王手がかかりにくいという長所がある反面、逃げ道が少ないというデメリットもある。つまり、受けのことをあまり考えずに攻めに専念したい人のための囲いであると言える。

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図2:33手目 何気ない手▲7八金

アマチュア有段者における振り飛車穴熊の駒組みから攻め方は広瀬八段の考え方が広く浸透している。早めに△5四銀と上がってから飛車を振り直すのはまさに広瀬イズムの典型と言って良い。

この攻めの形に対して田口は6九の金を7八に移動した。7九に移動する手とどっちが良いかというのをネットで何回も指して比較した結果7八に金を移動したほうが良いのではないかと現在は考えている。この何気ない一手にも多くの経験値が盛り込まれている。

 

 

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図3:42手目 松尾流穴熊許さじの△4一飛

先手も右桂を飛ばして開戦の準備が整ったが、すぐには仕掛けない。田口の狙いは5七にいた銀を7九に運ぶことである。銀が7九まで進んだ形は松尾流穴熊と呼ばれ、プロ間ではこの形まで組めると勝率8割と言われる。銀が7九まで移動できるのも先ほどの▲7八金のメリットの一つである。

後手としては簡単に松尾流穴熊に組ませては勝てなくなってしまう。そこで、薄くなった4筋を攻める△4一飛というのは理に適っている。しかし、田口の狙いは玉を固めるだけではない。ここから先手は▲2四歩△同歩▲6五歩と仕掛けるのも狙いだった。このとき飛車が6筋にいると同歩で飛車先の歩が伸びるので容易ではないが、飛車が4筋にズレたのでこの仕掛けを決行しやすくなったのである。

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図4:53手目 ▲2二飛成は一手遅い飛成だが…

お互いに飛車を成りあって図4の局面になった。後手の方が先に飛車を成ったが取れる駒が玉と反対側の香車くらいしかないのに対し、先手龍は守りの5二の金取りになっており、これを受けなければならない。

よって先手の方が攻めが一手早いため、先手が有利になっている。後手としては単純な飛車の成合いは避けなければならなかった。相穴熊戦の場合、中盤にリードを奪われると玉の逃げ道がない分逆転が起きにくいと思う。

 

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図5:69手目 安全勝ちを目指しすぎた▲7九香

相穴熊戦の場合、角の価値が低く、金と交換する手が頻出する。先手の次の狙いは▲6一角成だが、その一手が来る前に後手も猛攻を開始した。

△5六角と守りの要の7八金を食いちぎろうとする手に対して▲7九香と受けたが、疑問手だったかもしれない。(そもそも攻め方もおかしかったのでなんとも言えないが)

それでも△7八角成と食いちぎられたほうが個人的には嫌な展開だったが、後手はそれだけでは攻めにならないと判断して△1九龍と香車を補充したがこれが敗着だと思う。一手緩んだことで攻めのターンが先手に移り、後手は苦しくなった。

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図6:89手目 田口、徹底して7二の地点を狙う

振り飛車穴熊を横から攻める際の急所は7二の地点を攻めることである。なぜなら8二にいる銀は横には利いていないからだ。

図6は後手はちゃんとした穴熊の形になっているが先手が勝勢なのだ。先手の6三の歩が後手陣に強烈なプレッシャーを与えている。例えば7二の地点を受けようと△6一角と受けると、▲7二金△同角▲6二歩成で後手はジリ貧である。

本譜はこのあと受けがないと見て攻めて来られたが、先手が明確に一手速く、そのまま勝ちになった。

相穴熊戦は一見するとがっぷり四つの長期戦になりそうに見えるが、実際は中盤で勝負が決しかねないスリリングな戦型なのである。こういう終盤力が絡まない戦型は田口の得意とするところなのでこのような戦型を指すプレーヤーが増えて欲しいと密かに願っている。

5月9日の将棋

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図1:22手目 後手横歩取り8五飛4一玉型を選択

今回田口は先手である。実は5月9日は私の誕生日だったのだが、やることはいつもと変わらずネット将棋である。本局は数年前にプロ間で大流行した戦型である横歩取り8五飛4一玉型との対局である。

田口はこの戦型を3年前には最も得意な戦型にしており、中でも「新山崎流」と呼ばれる変化を猛烈に研究して初の24三段突破を果たした程である。

しかし、そんな大流行した戦型も今では下火になっている。その理由も解説しつつ、棋譜を振り返ろうと思う。

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図2:26手目 後手危険な駒組み

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本来後手は5一金、4二銀と指して「中原囲い」と呼ばれる形に組んでから右桂を跳ねるのだが、後手はいきなり桂を跳ねてきた。

対局中は違和感を感じながらも田口は玉の囲いを優先したが、図2から▲3三角成△同桂▲7七桂△8四飛▲9五角△8三飛▲7五歩と進んで右上図まで進むと速い桂跳びを上手く咎めた格好だ。以下△9四歩には▲7三角成(!)△同飛▲6五桂で攻めが切れない。

次同じ駒組みをされたらこの仕掛けで一気に潰したい。

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図3:31手目 横歩取り8五飛4一玉型のテーマ図

横歩取り8五飛4一玉型がプロ間で廃れた原因には前述の「新山崎流」という有力な対策に加え、図3の先手の形が出てきたのが大きい。

後手の金銀4枚は左右に分断しているのに対し、先手の金銀4枚は密接しているので後手玉より堅い。なので、勝率を重視するプロの将棋からは現れにくくなった。

アマチュア間でも横歩取り8五飛4一玉型は激減したが、実際にはこの局面も難しい。個人的には△7五歩と仕掛ける手は結構有力ではないかと考えている。

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図4:36手目 後手、先手の仕掛けを徹底的に警戒

後手は図3の時点で仕掛けを見送ったことで、自分から仕掛けず、徹底的に仕掛けを封じるために△2三歩を打ってしまった。歩は2枚ないと有効な仕掛けは後手からなくなるため、後手は先手に攻められるのを受ける将棋になっている。

ここから▲7五歩という手が有力だったみたいだ。しかし、田口は9筋を狙おうと考えた。

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図5:42手目 横歩取り 一手の油断が 命取り

結論から言うと、田口の9筋を狙う構想はあまり筋の良いものとは言えなかったようだ。が、後手の6三銀が田口の筋悪の構想を成立させてしまう痛恨の敗着となってしまった。

9筋の歩が伸びていなければ△6三銀という手は悪い手ではなく、次に△6二金と上がれば後手陣のバランスがよく、色々な狙いも出てくるのだが、この場合は▲9四歩の仕掛けが成立する。以下△同歩だと▲9二歩なので△6五歩だが、この時に▲5五角が桂取りになってしまうのが△6三銀の罪。桂取りを受けると9筋突破が確定し、先手が一方的に攻めることができる形になった。

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図6:55手 投了図

投了図以下、△9四飛と香車を取ると▲9五歩で飛車が詰むし△8一飛と飛車が逃げても▲9三香成が次の▲8二成香を見て厳しい。先手玉が堅く反撃の余地もないのも見逃せない点だ。

横歩取りという戦型は駒組みで一手ミスをするとあっという間に崩壊してしまうスリリングな戦型であるため、アマチュア間ではなかなか人気がない。しかし、序中盤の研究がそのまま勝ちにつながるので達成感を得やすい戦型だと個人的には考えている。

横歩取りを指すアマチュアがもっと増えて欲しいと思う今日このごろである。

4月28日の将棋

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図1:40手目 先手四間飛車▲6六銀型

今回はアマチュアでは未だによく指されている四間飛車対居飛車穴熊で田口は後手である。この相手に田口は2連敗を喫していた。(連コしていたわけではない)

前回負けた後、激指先生に修正手順を教えてもらっていたので、今回こそは勝とうと思って臨んだ。田口は▲6六銀型に△4二角という手を好んで指している。右桂を捌きやすいというのが△4二角のメリットだと思う。

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図2:43手目 桂跳ねにいきなりの反発▲7五歩

この手も2連敗したときと全く同じ手である。この手に対して同歩と取ると同銀で相手の攻めが速くなってしまう。ここは△2四飛の一手である。

以下、▲5五歩△同歩▲4五歩△2六歩▲同歩△5六歩▲5五銀△2四角が激指先生に教えてもらった手順。田口の事前検討ではここで、と金▲5六金と歩を払うも△3五歩と桂頭を攻めて後手が勝ちやすいという考えだったが、次の一手で別の手を指される。相手はこの戦型を指し慣れているのである。

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図3:53手目 と金攻めより速い▲4四歩

ここで▲4四歩という手が好手であった。仮に一直線に攻め合う△5七歩成のような手だと▲4三歩成△4七歩成▲3二と△3八と▲同金となると先手玉は意外と安全で後手が負けてしまう。なので、この▲4四歩は受けなければならない。田口は△4二金と引いたが、強く△同金という手もあったのだろうか(激指先生推奨手だがいい手に思えない…)今後の検討課題である。

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図4:58手目 味の良い△7五歩

先手は2枚の歩の楔を打って満足の展開だと思う。この一手前で△5七歩成を防ぐために自玉を固めながら角道を通す▲6六銀という手を指され、対局中は田口も良い手っぽいなぁ、と感心していたのだがこれが緩手だったみたいで、逆転したようなのだ。▲5六金と歩を取りに行く方が優ったらしい。ココらへんは何がプラスの手なのか直観的にわかりにくくアマチュアには難しい局面だと思う。

▲6六銀に対して△7五歩が好手で、飛車が5四に回ったり、▲7六歩で角をいじめる手などが生じ、先手も忙しくなった。先手はここで▲6四歩と△5四飛を防ぎつつ攻める手を指したが、これも単に△同歩で次の△6五桂が厳しい。この数手で後手が一気に優勢になった。

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図5:72手目 穴熊の勝ちパターン、金取り放置の攻め合い

先手はかなり強引に攻めてきているが、図3の時と違い、今度は後手も持ち駒が増えており、後手が攻めているのが5筋と1路遠いので攻め合って後手が勝てる。例えば一直線に攻め合った場合を考えてみると、▲5三歩成△4六歩▲4二と△4七歩成▲3一と△4四角で以下、かなりの長手数になるが先手玉が詰む。(ただし、この詰みは長手数かつ難易度もかなり高いので30秒将棋で詰ませられる自信は無い。もしかしたら一直線に進まれたらまずかったかもしれない)

一直線に進むと先手玉が詰むので受けなければならないが、並みの受けでは穴熊の方が1手速い。激指先生推奨の勝負手に▲3五銀という手があり驚いた。△同歩と取ると角の利きが止まり▲3四桂が生じるというものだ。(ただそれでもすぐに逆転するわけではないが)

実戦は▲同銀と歩を取ってくれたので△5七歩成で気持ち的に凄く楽になった。

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図6:87手目 「端玉には端歩」という格言を失念している田口

図6では△1四歩と突く手が「端玉には端歩」の格言に則った好手で、後手は適当な受けがなく後手勝ちになる。が、田口は△4二同金と金を取ってしまう。これでも後手勝勢には変わりないが、▲4三歩成とされると後手玉に王手がかかる形になってしまい、早指しなので大逆転しかねない危険な手だったように思う。

ただ、本譜は▲5一角と、仮に▲4二角成となったとき馬の効きで受けようという攻防手だが、△3三桂が好手で後手の勝ちとなった。

・・・改めて自身の棋譜を見てみると終盤危なっかしくて見てられないが、中盤で相手のミスがあってからは一度も逆転されずに勝てたのは良かった。2連敗した相手に何としても勝とうと激指先生と検討した成果が出て嬉しい一局だった。

4月22日の将棋

この自戦解説をする前に田口の24でのレートの推移を軽く話しておくと、21日にレート2,000を超えて欣喜雀躍していたのだが、さらに2連勝して約2年前に出した最高レートである2,044を上回って2,045という自己最高レートを更新したのだ!

2年前のかつての自分の記録を抜けたことには感慨深いものがあった。2年前のときとの共通点もいくつか発見できたような気がするので、もし将棋の指導をする機会があれば棋力向上に必要な心構えを伝えていければと思う。

その次の1局は負けてしまいレートを落とすも、その次は勝ちで2,043になった。そのタイミングで二段の相手からの挑戦を受けたので受けてたった。

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図1: 4手目 △8八角成にダイレクト向かい飛車を期待する田口

本局は田口が先手である。4手目で△8八角成という手を指された。最近の田口は4手目は△9四歩だが、この手を少し前の田口は愛用しており、自己最高レートを超えるのに絶好の戦型になるのではないかと胸踊らせた。

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図2: 12手目 後手1手損角換わりにも拘らず△2五歩と伸ばす

が、田口の期待通りにならず戦型は一手損角換わりになってしまった。一手損角換わりとは後手番から角換りすることによって先手が手得する不思議な戦型なのだが、現在でもプロ間でたまに指されている戦型である。

この戦法の骨子は飛車先を突かないことで自玉の駒組みの幅を広げることにあるのだが、なんと後手は△2五歩と飛車先を伸ばしてきた。いかにもアマチュアといった感じがある。この時点で田口は(相手は棒銀しか指せないな)と察した。

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図3: 24手目 予想通りの棒銀

後手は予想通り棒銀を指してきた。棒銀の棋譜は本ブログでも紹介したが、その時田口のオススメといった手はここで▲6六銀である中央を攻めるのである。

すぐに△9五歩と来られるかと思いきや、一回△7四歩と力を溜める手を指された。これは好手で、桂を使ったり左銀で飛車をいじめる手を消している。

ここで激指先生は▲4五桂という手を推しており、本譜に比べその方が優ったと思うが、田口の選択は▲7七桂。確かに桂馬2枚で中央を攻めるのは強力なのだが、守りの桂を攻めに使うのはリスクを伴う。▲7七桂と跳ねるのは9筋を攻められてからのほうが良かった。

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図4: 33手目 本ブログで有力と紹介した▲9四歩だが・・・

以前本ブログで対棒銀ではこの▲9四歩という手が有効になると紹介したが、この局面では悪手である。理由としては△7四歩と▲7七桂の交換が入っていることで後手の飛車を前回のブログのときのようにいじめられないからである。

この局面で手抜かれて△8六歩と攻められたら後手ペースだったと思うが、後手はここで△9二歩と受けてしまう。これなら先手が有利だが、本局でのこの1手は大いに反省したい。ちなみにここでは▲9四歩の効果が薄いので、単純に△4五桂と跳ねていくほうが優ったと思う。

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図5: 44手目 飛車を引かないソフトの攻めを意識

桂馬2枚が中央に跳ねて相手玉に迫っているので局面は先手有利である。ここで前回ブログを書くときに激指と検討した成果を活かそうと思った。それが、▲3四飛である。一見△3三香で飛車が詰むが▲5三桂左成、△同銀、▲同桂成、△同角、▲7四飛で飛車が助かった。

これは激指のような順だろうと思ったが、激指先生は△3三香に対して▲4四飛(!)、△同歩、▲5三桂右成で攻め切るのが最善とのことだった。まだまだ激指先生の域は遠いな、と思い知らされた。

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図6: 80手目 次の一手問題

お互いミスが多い中終盤だった。とはいえ、やはり中央を攻めていく方が勝ちやすいのは間違いないだろう。先手がものすごい駒得しているので普通に取られそうな飛車を逃しても勝てるとは思うが、ここで最短で勝つために次の手で必至を掛けてほしい。おわかりいただけるだろうか?

正解は▲3三歩である。これで受けがなく次に後手が何を指しても詰んでしまう。本譜は△5四歩、▲3二歩成、△同玉まで進んだが、ここから11手で詰む。むしろ11手まで伸ばす受けの手を探すのが難しいかもしれないが是非頭の中で詰まして欲しい。

・・・というわけで自己最高レートを更新して2051になった。かつての自分を超えることができて非常に嬉しく思う。バドミントンのサークルのサイトに勝手に始めたこのブログも自身の棋力向上に大いに役立っていると思う。これからも更新していければと思う。

4月19日の将棋-番外編-

http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=83045

田口が後手番では4手目△9四歩と突くダイレクト向かい飛車を採用しているが、プロの棋戦でも現れた。この棋譜は田口にとってかなり重要な棋譜となりそうだったのでソフトと一緒に検討してみた。

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図1:12手目 後手 竹内四段、ダイレクト向かい飛車を採用

本局は棋聖戦の決勝トーナメント1回戦で最初は竹内四段の先手で先手中飛車を採用したが、後手の豊島七段の差し回しが見事で千日手になり先後入れ替えて千日手指し直しの一局である。

ここでアマチュア四段以下レベルだと△6五角の率がかなり高いが、最近のプロ間では△6五角ではなく持久戦を目指す▲7八玉が多い。これに今ダイレクト向かい飛車は苦戦しているのである。

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図2:21手目 仕掛けを封じる▲3六歩

以前は▲7七銀と上がっている形が多かった(下図)ため、 0414_ex1

△2四歩と飛車先逆襲する仕掛けがあった。これはこれでいい勝負なのだが、アマチュア間ならかなり後手が勝ちやすい展開になりやすいと思う。

しかし、▲7七銀を保留する指し方が大石六段の「ダイレクト向かい飛車最新実戦ガイド」(※1)にも紹介されている有力策で田口も24でやられたことがあり、負かされた記憶がある。豊島七段の▲3六歩の意味を簡単に言うと、△2四歩と仕掛けられた時に▲7七角△3三角▲3七桂とされると飛車先の銀が身動き取れない。つまり△2四歩の仕掛けを封じているのだ。

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27手目 ▲7七銀保留の効果、▲7七角!

▲7七銀保留の効果は△2四歩の仕掛けを封じていただけではない。後手は4四銀から3筋の歩を交換しつつ銀を繰り出して仕掛けを見出そうとしているが、▲7七角という手が好手である。もし▲7七銀型だと角は▲6六角と打つことになり、これだと△4四銀と引く手がある。これでも難しいが激しい展開になり、後手番なら十分の戦いに持ち込める(と思う)。

しかし▲7七角で△4四銀だと▲4五歩△5五角▲同角△同銀▲7七角△6四角▲2六飛で、次の▲5六歩が非常に受けにくく先手有利になってしまう。よって飛車取りを受けるには△4四角しかないのである。

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図4:33手目 先手銀冠を目指す

田口が個人的に注目しているのはこの局面である。先手の豊島七段は銀冠を目指した。これも▲7七銀保留の効果と言えるだろう。

銀冠という囲いは上部に厚く、プロ間で好まれる囲いである。銀冠に組ませてはかなり勝ちにくいのでこの局面で後手としては動いていかなければいけなかったのではないかと思う。

ソフトの検討だと△3五銀、△5五銀、△6四角のような手を挙げてくれた。どの手も互角やや先手持ちという感じなので好んで指すような手ではないと思うし、竹内四段が仕掛けを見送ったのも妥当な判断だとは思うが、その後の展開を見ると、動くチャンスはここしかなかったのではないかと思う。

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図5 42手目 後手5筋の位を確保するも…

先手は銀冠に組めて満足の駒組みだと思う。図4の局面では玉の堅さは先手<後手だったが、図5では先手>後手になっている。

対して後手は中央を厚くして先手から仕掛けられたらカウンターしますよ、と見せて手詰まりを狙っている。しかし、ここからの豊島七段の仕掛けが見事だった。

詳しくは冒頭のリンクを参照してほしいが、1筋から仕掛けて無理矢理飛車交換に持ち込んだあと、銀冠の特徴である端攻めを繰り出したのである。田口は棋譜を見てこんな仕掛けがあるのか、と思って感動した。

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図6 70手目 先手豊島七段の流れるような攻め

銀冠の長所は銀が端に効いているので端攻めをしても反動が少ないことにある。その長所を遺憾なく活かして豊島七段が攻めを繋げており、竹内四段は完全にされるがまま、といった手順が続く。

図6で豊島七段の次の1手が決め手級の一手ではなかったかと思う。▲9三香。△同桂と取ると▲7三銀と打たれて決まってしまう。しかし、放っておくと▲9二飛の一手詰め。よって△7二玉と早逃げで粘ろうとするも▲9二香成が当たり前だが厳しい追撃で、まさに端攻めのお手本のような手順と思う。うちの激指先生は▲9三香という手は読めていなかったが、指すと評価値がぐんぐん伸びていく好手だった。私もこういう攻めを繰り出せるようになりたいものである。

・・・というわけで、ダイレクト向かい飛車完敗という田口にとってはかなり残念な結果になってしまった。やはり▲7七銀保留型の作戦が有力で、アマチュアにも真似しやすい形に見えるのでこの作戦の対策を用意するのは急務と言えるだろう。(とはいえ、この棋譜見て覚えているアマチュアが沢山いるとも思えないが笑)。やはり個人的には図4の局面が瞬間的に先手の形が不安定なので気になるところである。無理やり暴れていく順はないかを少し掘り下げてみようと思う。

※1 大石直嗣「ダイレクト向かい飛車最新実戦ガイド」 ダイレクト向かい飛車を多用している大石直嗣六段による講座+自戦解説。▲7七銀保留型は対伊奈六段戦で伊奈六段が披露した優秀な構想として紹介されている。ただし、伊奈六段は本譜の▲3六歩ではなく▲5八金と指している。

4月12日の将棋

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図1:8手目 相手ゴキゲン中飛車を採用

ブログの投稿は約3週間ぶりだが、その間指していなかったわけではなく、むしろより多く指していた。何故か結構勝てており三段を無事キープできている。ただ、内容はあまり良くないものが多い。実際、対藤井システムの棋譜を投稿しようと思ったがソフトと検討すると悪手の連続でとても自戦解説に値しないようなものだった。

ただ本局は先手の田口に対し後手の方はゴキゲン中飛車を採用された。ゴキゲン中飛車とは角道を止めずに5筋の位を取る中飛車戦法のことで、近藤正和七段が発案した戦法。ゴキゲン中飛車のゴキゲンとは近藤七段の人柄のことを指している。一時期はプロ間で圧倒的な勝率を誇ったが先手に有力な対策ができて現在は下火になっている。

田口はこのゴキゲン中飛車相手には勝率は7割程度あり、得意にしている。

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図2:16手目 後手4四銀対抗形を採用

先手は▲6八玉と上がりすぐに▲3六歩から右銀を中央に繰り出していく「超速3七銀」と呼ばれる戦法を採用した。これは星野良生四段が奨励会員時代に発案した戦法でこの戦法の出現によりゴキゲン中飛車の勝率が激減したのである。

対する後手は負けじと△4四銀と上がる形を採用した。超速3七銀に対して後手の指し手はいくつかあるが、この形もプロ間でよく指されている。しかし田口が最近読んだ「久保&菅井の振り飛車研究」(*1)でこの△4四銀対抗形は久保九段、菅井五段とも良いイメージがないという見解を示されていた。振り飛車党の大家二人がどのような順を嫌がっているのかを読んで覚えていたので自信を持って駒組みを進めた。

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図3:37手目 本来後手が許してはいけない▲8六角

4四銀対抗形の将棋では相穴熊の将棋が多い。本局も相穴熊となった。この局面は後手の△5四飛という手が疑問手で先手が既に良くなっていると思う。その理由として

①先手の金の方が後手の金より玉に近いので囲いの耐久力が高い

②先手の角は後手陣を睨んでいるが後手の角は現状4四銀と5五歩が邪魔で守りにしか利いていない

③先手は右桂を3七桂、4五桂と中央に使っていけるが後手の左桂は角が邪魔で攻めに使えない

4つ目の理由は後述するが、以上の理由からここから負けるわけにはいかないと思っていた。②の理由を防ぐために後手は本来△4二角という手を早い段階で指して▲8六角という手を許してはいけないのだがそれが実現しているのが大きい。この△4二角という手は村山慈明七段の「ゴキゲン中飛車の急所」(*2)という定跡書に詳しく載っており、後手の勉強不足である。

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図4:44手目 先手理想型からの開戦

前述の「久保&菅井の振り飛車研究」において4四銀対抗形は何かのときに▲4五銀と銀をぶつけられるだけで仕掛けが成立してしまうのが嫌だ、という見解を示されていた。先ほど後述すると言ったの4つ目の理由は

④▲4五銀の時に飛車取りになるので△同銀としかできない

というのもある。そのため△5四飛は疑問手だと思ったのだ。本譜は図4から▲4五銀、△同銀、▲同桂に後手の方はうっかり△4四歩と桂取りに歩を伸ばしてしまったが▲6三銀で飛車が詰んでしまった。田口が後手なら投了(*3)してたと思うほどのミスで後手は△4四歩のところで△5二金と▲6三銀を打たれないように頑張るしかなかったのではないかと思う。(ただそれでも▲6五歩と突かれて先手の攻めは続くが)

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図5:62手目 後手△4九飛の頑張りだが・・・

局面は先手が勝勢だが後手に飛車が渡っている。現在は先手が角得の上玉型も堅いので当然攻めの手を指しても勝てる。が、ここで友達をなくす手を指してしまう。

▲1八飛。右端にいる香車すら渡さないという強欲な手でネット将棋だから指した手であると言える。面と向かって指している相手にこんな手を指したら性格の悪さが疑われてしまう。是非注意されたし。

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図6:76手目 詰めろを防ぐ△4一龍に対しての決め手(?)

諦めの早い田口からすると後手の人は何故指し続けられるんだろうと思える局面が続き図6の局面。田口の次の一手は▲4八飛。最善手ではないと思うが、△同龍は▲8一金の一手詰めで取ることができない。△4二歩の一手に▲5二金と追い打ちをかけたところで後手投了となった。以下それでも指すなら△7一龍しかないが▲同金、△同銀、▲4一飛、△7二金、▲3一飛成、△3七桂成、▲4二飛成(▲8七銀から勝ちになっているが敢えて笑)と徹底的にメンタルを折りにいくのが、諦めの悪い相手には良いだろう。

本局は序盤の作戦勝ちから中盤で相手に致命的なミスが出てそのまま勝勢になったという将棋であった。改めてプロの定跡書を読みまくることが棋力の向上に大いに役立つことを思い知った一局だった。

※1 久保利明、菅井竜也「久保&菅井の振り飛車研究」 振飛車党で捌きの棋風で知られる二人の棋士が現代振り飛車の将棋で重要と思われる局面について各々の見解を語り、和やかな雰囲気で対談している。ゴキゲン中飛車については現状は正確に指せば居飛車有利だが実戦的には居飛車が正確に指すのは大変で、むしろゴキ中の方が指し手がわかりやすく指しやすいのではないかという見解を両者示している。

※2 村山慈明「ゴキゲン中飛車の急所」 ”序盤は村山に訊け”と言われる程の研究家である村山慈明七段のゴキゲン中飛車の定跡書。ゴキゲン中飛車に対する対策を時系列的に紹介しているのでプロがどのような研究をしてきたか歴史書としても読める名著。ゴキゲン中飛車に関しては本著と菅井五段の著書「菅井ノート後手編」を読めばアマチュアレベルで必要な知識は網羅できると思う。

※3 田口は諦めが早い。アマチュアレベルなら逆転できるかもしれないような局面でも指してて辛いと投了してしまうことがしばしば。ちなみに諦めが早いプロの代表に島朗九段がいて、タイトル戦のニコ生でも形勢に差がつくと「島なら投了」という文字が飛び交う。

3月22日の将棋

http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmds=display&kid=82939

上の棋譜を参考にすると、これからいかに田口がプロの棋譜を真似しているだけかが分かって頂けると思う。

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図1:9手目2五歩に対し、後手3二飛で再び4→3戦法の相手

連敗を喫してしまい、24三段から陥落しこの一局に勝ってもギリギリ三段届かないというレートでの対戦である。特に対藤井システムに全く勝てておらず、24初段に負けてしまったのが痛かった。対藤井システム相手でも穴熊に組みに行って負かされているので5五角急戦を採用すべきか迷っている。

それはそうと、本局は以前ブログでも取り上げた4→3戦法を相手が採用された。しかし、先月と違うのはブログで私の駒組みを激指とどこが問題だったかを検討しただけでなく、A級順位戦最終局渡辺二冠対久保九段戦で後手の久保九段が4→3戦法を採用したが、69手という短手数で投了に追い込まれた。このブログで4→3戦法はプロ間では勝ちにくい戦法と紹介したのでその通りの内容と結果になりホッとした。

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図2:27手目 個人的に感心した▲5八銀

図2の局面は9筋の端歩を交換していないこと以外は上の参考棋譜と全く同じである。

上の棋譜で個人的に一番感心したのがこの▲5八銀という一手である。飛車打ちの隙を無くすために仕掛けられたところで▲3八銀という手は今まで見たことがあったが、銀を5八に引く手は知らなかったしソフトも読みに入っていない。玉型の堅さを重視して細い攻めを繋げる棋風の渡辺二冠らしい一手だなと思った。

本譜は△2五歩、▲同飛に△2四銀で上の棋譜と離れた。

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図3:33手目 隙ありの▲1四歩

後手は先手の飛車を抑えこみたいのだが、▲1四歩が序盤に1筋を突き越した効果である。素直に同歩だと▲1二歩、△同香、▲4五角が狙いである。

そこで後手は△3六歩と暴れてきたが、局面は先手有利に傾いている。

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図4:39手目 予想外の悪手▲1四歩

33手目と同じ▲1四歩という手だが、前者は好手、後者は悪手である。この▲1四歩という手は△同香▲同香となればすぐに香車が取れないでしょう、という手で頻出の手筋ではあるのだが、この局面では悪手で△同香▲同香のあと△1六飛という手が香取りと飛車成を見た好手で、▲1四歩を入れずに単に▲1三同香成ならば△1六飛、▲1七香、△4六飛▲1四成香で成香の活躍が見込めるが、本譜だと1四の香車が使いづらく、ソフトの評価値が逆転する一手だった。

しかし、▲1七香という手に対して△4六飛なら相当難しい将棋になっていたが、△2六飛と飛車交換してくれたので、事なきを得た。以下、1一飛車が単純ながら強烈で、玉型の差もあり必勝と断言して良いと思う。つまり39手目という短手数にして敗着が出てしまったのだ。

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図5:69手目 後手投了図

本局終了後はプロの棋譜を参考にした完勝譜で序盤中盤終盤隙のない一局かと思っていたが、図4のように中盤もミスがあり、本局の寄せ方も後で検討すると最善とは程遠い差し回しだったようだ。隙だらけだったので実力不足を痛感する。

とはいえ、本譜は奇しくも上述の順位戦の棋譜と同じ69手で後手を投了に追い込んだ。なんといっても先手玉は金銀4枚の守りに一切手が付いていないのが心強い。

ちなみに図5は△同玉から13手詰めである。長いが30秒将棋の対局中に田口でも分かった詰みなので、難しくはないはずである。是非頭のなかで詰まして欲しい。

・・・もしこのブログをしていなかったら順位戦の4→3戦法の棋譜にここまで注目することはなく、「久保九段はなんでわざわざ勝てない戦法の4→3戦法なんか使ってるんだ…?」という感想を抱いて流していただろう。しかし、このブログで4→3戦法を取り上げて自分なりに色々考えたことで、むしろ渡辺二冠の対4→3戦法の優秀な対策という面に目がいくようになった。また一つプロの棋譜を見る楽しみ方が増えたような気がする。

3月17日の将棋

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図1:13手目 先手横歩取り回避の▲2四飛

今回田口は後手である。いつもは早指しだが今回は持ち時間15分秒読み1分での対局を行った。今回もダイレクト向かい飛車を志向した4手目△9四歩に対して▲9六歩と受けられてしまったので横歩取りを採用した・・・つもりだったのだが、先手からの変化球で取れる横歩を取らずに飛車を引いた。かつて故・米長邦雄永世棋聖はこの取れる横歩を取らないのは肝が小さいという旨の話をされた記憶がある。

精神論抜きにしても、実際プロ間ではこの局面で後手の方が手段が増えるため先手のメリットが消えると見られているが、アマチュア的には横歩取りより相掛かりが得意な方ならこの局面に誘導するメリットはあるのではないかと個人的には考えている。実際横歩取りの定跡には精通していても相掛かり調の将棋はさっぱりなので、かなり動揺した。

 

 

 

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図2:33手目 先手ひねり飛車採用で4手目△9四歩に注文をつける

先手が横歩を取らない手の真の狙いは相掛かり調の将棋にすることではなく、ひねり飛車にすることだった。

ひねり飛車というのは居飛車の出だしから図2のように飛車を転換して石田流のような形をつくる戦法である。横歩取り系の将棋で用いられる。

おそらく先手の方の考えとして、9筋の交換を先手にとってプラスにするにはひねり飛車を採用することで、先手の▲9六歩は角が9七の地点に行けるが、後手の△9四歩はそれに比べるとプラスにはなっていないでしょう、ということだろうと推察した。

非常に理にかなっているなぁ、と感心したがひねり飛車はプロ間では勝率があまり高くない戦法であり、また田口はひねり飛車対策を得意にしている。確かに△9四歩は不急の一手なので普通のひねり飛車に比べると損ではあるが、その程度の損でも問題ないと考えている。

 

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図3:49手目 先手無理気味の仕掛け

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先手の方がもう少し組み合うべき所でいきなり仕掛けられた。図3の局面では△同銀、△7五歩、△同桂の3つの選択肢が思いついた。

 

参考図1:50手目7五歩からの楽観的な読み(60手目)

田口は基本的に穏やかな順から考えてしまうのでまず△同銀を考えたが、先を読もうと思ってもお互いに候補手は多いのに有効手がない難解な将棋になりそうで却下した。(局後の検討で、ソフトの評価値は後手+30程度で互角)

次に△7五歩で、相手に仕掛けられた時点では△7五歩を読んでいた。実際の読みの一例として飛車と桂をお互い取り合って先手が両取りを掛けたところで鋭いカウンターを決める!という参考図1までの楽観的な読み筋を考えていたが、先手が飛車交換後すぐに桂馬を取らずに▲6五桂という手が好手で、難解だということに気づいた。(ソフトの評価値は後手+300程度で後手有利)

△7五歩が難解なので、△同桂という手も考えてみようとなった。一目▲7四歩で桂頭狙われて良くないと思っていたが、7三にと金作られても少し読んだら大丈夫なことに気づいた。そこで実戦では大して読まずに△同桂と指した。(実際ソフトの評価値は後手+700で後手優勢。最善手)

△7五歩の変化を4~5分くらい掛けて4~50手くらい読んだのだが、1分くらいで思いついた△同桂の方が良い手だったということだ(計5分50秒この一手に要した)。おそらく30秒将棋だったら△7五歩と指してたので15分将棋の効果が出たといえる局面である。

 

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図4:66手目 気持ちよすぎる△7四桂

中盤私にも小ミスは有ったのだが、咎められることなく進み、「こうなればこっちが良くなりそう」と思っていた読み筋通りにスラスラ進んでとても気分の良い将棋だった。この△7四桂は4手前あたりから読んでいたが、まさかその通りに進んでしまうとは、という感じでディスプレイを前にしてニヤニヤしていた。

この場面で先手の方も長考されて、▲8五歩、△同飛、▲7六金(!)という勝負手を繰り出されてきたが、相手が長考されたのでもしかしてこの順が来るのでは、と思い予め読んでいたので、少考で△同歩、▲8五龍、△8六角と指すことができた。

不運なことに、8六角が6八の銀取りになっているのである。先手は二枚飛車で攻めようにも6一に底歩が効くので効果が薄い。後手勝勢になった。

 

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図5:119手目 度重なる詰みを逃した末…

私なら投了、という局面から30手以上続いてしまったのは田口の詰ます力の弱さに他ならない。この図に至るまでに3~4度詰みを逃している。先手は攻め駒がなく、負ける心配がないとはいえ、詰みを逃し過ぎである。大いに反省したい。

この局面で△5九龍と香車取ろうか迷ったが、流石に詰まさなきゃだめだ、と気を入れなおして読んでようやっと△6七龍からの詰みを発見できた。

以下、▲5七香、△5八銀、▲4六玉、△3五香、▲同桂、△同歩で先手の方は投了された。どう逃げてもあと4手で詰むのでわからない方は盤を並べて考えていただきたい。

本局は得意の対ひねり飛車で快勝を収めることができた。24で三段を維持できているのは自信になる。あとはもう少し詰む詰まないの局面で上手くさせるようになれれば、と思っているが詰将棋をもっとこなさなければいけないだろう。まだまだ道は遠く険しい。

3月8日の将棋

前回の投稿で、もう少しで24三段のレートが近いと書いたが、同じくらいの実力者に2連勝すれば三段になれるレートだった。

そして3日ぶりに指すわけだが、今日の一局目がこちらの先手で、「2手目3二飛戦法」に相手が24三段とは思えないくらいの快勝だった。2月8日にブログを投稿する際に三間飛車対策を激指先生と検討したが、その経験が活きたと思う。

その将棋は田口の実力以上の鋭い寄せが炸裂した(というか相手のかけた技が完全な暴発だったのだが)ので載せようかと思ったが、棋譜を保存するのを忘れてしまい、思い出そうと思っても相手の序中盤で不思議な手が多くて思い出せないこともあり断念した。

あと一勝で24三段復帰とあり次の一局は気合を入れて臨んだ。

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図1:5手目 4手目△9四歩に対し、端を受けられる

4手目△9四歩は前回の投稿でも書いたが、ダイレクト向かい飛車を志向した一手である。それに対して5手目に▲9六歩と受けて来られた場合はダイレクト向かい飛車にするとやや損なので、別の戦法を目指すことになる。2月は2月14日の投稿にもあるようにノーマル四間飛車を指していたが、いかんせん勝てないので3月に入ってから△8四歩と突いて、田口の本領である「横歩取り」を採用している。

田口がアマ四段を取ったときに将棋センターで同じく四段の人たちと6局対戦して3勝3敗で四段を頂いたのだが、その3勝は全て横歩取りの将棋である。横歩取りだけで四段を頂いたようなものなので、他の戦法でももう少し得意戦法と言えるような戦法を増やしていきたい。

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図2:24手目 後手、8四飛・5二玉型

最近のプロの横歩取りでは大半は8四飛・5二玉型である。少し前までは8五飛・4一玉型が多く、その中の「新山崎流」と呼ばれる変化は自分なりにかなり研究した記憶がある。最初に24三段突破した時もその戦型がプロ間で流行っていたこともあり24で指してくる方も多く、勝ち星を荒稼ぎできた。

が、今では先手が新山崎流の変化にせず、その戦型になることはまずない。横歩取りはプロの研究速度がやたら早く、定跡がコロコロ変わるのである。なので、読みの力はイマイチだけどプロの棋譜を追っかけまくる田口みたいなのが勝ちやすく、プロの棋譜はあまり見てないけど毎日詰将棋解いて終盤力鍛えているみたいな人には向かない戦法だと思う。

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図3:39手目 相手の消極的な中盤で有利になるが…

この2手前に、▲8七歩という「これは咎めなければ!」という手を指されてのこの局面。この局面は有利だと思っていたし、実際ソフトに解析させると後手有利という評価値が出る。しかし、ここでもたもたすると先手の形が良くなるので後手は上手く攻めを繋げなければならない。その手順が浮かばず、取り敢えず△3七歩▲同銀△2五飛とぶつけて、▲同飛なら△同桂が銀に当たるのでどうか、と思っていた。実戦は飛車がぶつかり合うもどちらも交換したがらない不思議な展開が続いた。

しかしその後ソフトとの検討では先手から飛車交換後、冷静に▲2八銀と引かれると意外に手がなく、後手としては3二にいる金が浮いているので何かにつけて3筋に飛車を打たれる筋を警戒しなければならない展開になり、先手ペースになる危険性があった。

正着は△3七歩▲同銀に△1五角で、ソフトも指摘している上に定跡書(※1)にもこの攻め筋が紹介されているのでほぼ間違いないだろう。横歩取りの将棋に限らないが、攻めのパターンを覚えておくことは棋力向上に大いに役立つ。

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図4:50手目 強烈すぎる4五の桂

正しい攻め方ではなかったが、先手としても指す手は難しい。なんといっても後手は桂馬を4五に跳ねただけで先手玉はかなり危険になっているのである。

先に結末を言ってしまうと、この6手後の56手目で先手は投了してしまう。それくらい危険な局面なので、▲3七歩成とギリギリの利かし(手抜かれる危険性もあるが)を入れるか、▲6六角と攻防に角を打って△5七桂を防ぐかしなければいけなかった。

が、気持ちは分かるが▲2一飛と指された。これが敗着で、以下△5七桂成▲同玉△5九飛(←激痛)▲6八玉△2九飛成までで先手の方は投了された。まだ指せば十数手かかるとは思うが、先手は金銀を取られながら詰めろをかけ続けられそうにも関わらず後手玉は金銀の連結がしっかりしているいい形なので攻防ともに見込みなく、投了も仕方ないだろう。

・・・というわけで56手という短手数であっさり24三段の相手に勝ってしまった。横歩取りの将棋は1手事故るとあっという間に勝負が着いてしまうスリリングな戦法で、この戦法でしか味わえない綱渡り感覚がまた面白いところである。

 

これでレートは1900を超えて、晴れて24三段復帰である。私の元いた研究室でコンピュータ将棋を研究してた先輩が24で三段だったので三段というのは私の一つの目標である。その目標が達成できたのは嬉しい。が、一回負けたらすぐに二段なので、これに浮かれてばかりもいられない。これからも棋力向上に精進したい。

※1 村田顕弘五段「現代横歩取りのすべて」   内容は有段者(というか高段者)向けだと思う。序中盤に関しては物凄く網羅されているので、読めば本局のようにネット将棋で同じくらいの棋力の相手を簡単にボコれてしまう。が、定跡書の中でも専門的すぎてかなり難しい方だと思うので、級位者や横歩取り指さない方にはオススメできない。