4月19日の将棋-番外編-

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田口が後手番では4手目△9四歩と突くダイレクト向かい飛車を採用しているが、プロの棋戦でも現れた。この棋譜は田口にとってかなり重要な棋譜となりそうだったのでソフトと一緒に検討してみた。

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図1:12手目 後手 竹内四段、ダイレクト向かい飛車を採用

本局は棋聖戦の決勝トーナメント1回戦で最初は竹内四段の先手で先手中飛車を採用したが、後手の豊島七段の差し回しが見事で千日手になり先後入れ替えて千日手指し直しの一局である。

ここでアマチュア四段以下レベルだと△6五角の率がかなり高いが、最近のプロ間では△6五角ではなく持久戦を目指す▲7八玉が多い。これに今ダイレクト向かい飛車は苦戦しているのである。

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図2:21手目 仕掛けを封じる▲3六歩

以前は▲7七銀と上がっている形が多かった(下図)ため、 0414_ex1

△2四歩と飛車先逆襲する仕掛けがあった。これはこれでいい勝負なのだが、アマチュア間ならかなり後手が勝ちやすい展開になりやすいと思う。

しかし、▲7七銀を保留する指し方が大石六段の「ダイレクト向かい飛車最新実戦ガイド」(※1)にも紹介されている有力策で田口も24でやられたことがあり、負かされた記憶がある。豊島七段の▲3六歩の意味を簡単に言うと、△2四歩と仕掛けられた時に▲7七角△3三角▲3七桂とされると飛車先の銀が身動き取れない。つまり△2四歩の仕掛けを封じているのだ。

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27手目 ▲7七銀保留の効果、▲7七角!

▲7七銀保留の効果は△2四歩の仕掛けを封じていただけではない。後手は4四銀から3筋の歩を交換しつつ銀を繰り出して仕掛けを見出そうとしているが、▲7七角という手が好手である。もし▲7七銀型だと角は▲6六角と打つことになり、これだと△4四銀と引く手がある。これでも難しいが激しい展開になり、後手番なら十分の戦いに持ち込める(と思う)。

しかし▲7七角で△4四銀だと▲4五歩△5五角▲同角△同銀▲7七角△6四角▲2六飛で、次の▲5六歩が非常に受けにくく先手有利になってしまう。よって飛車取りを受けるには△4四角しかないのである。

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図4:33手目 先手銀冠を目指す

田口が個人的に注目しているのはこの局面である。先手の豊島七段は銀冠を目指した。これも▲7七銀保留の効果と言えるだろう。

銀冠という囲いは上部に厚く、プロ間で好まれる囲いである。銀冠に組ませてはかなり勝ちにくいのでこの局面で後手としては動いていかなければいけなかったのではないかと思う。

ソフトの検討だと△3五銀、△5五銀、△6四角のような手を挙げてくれた。どの手も互角やや先手持ちという感じなので好んで指すような手ではないと思うし、竹内四段が仕掛けを見送ったのも妥当な判断だとは思うが、その後の展開を見ると、動くチャンスはここしかなかったのではないかと思う。

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図5 42手目 後手5筋の位を確保するも…

先手は銀冠に組めて満足の駒組みだと思う。図4の局面では玉の堅さは先手<後手だったが、図5では先手>後手になっている。

対して後手は中央を厚くして先手から仕掛けられたらカウンターしますよ、と見せて手詰まりを狙っている。しかし、ここからの豊島七段の仕掛けが見事だった。

詳しくは冒頭のリンクを参照してほしいが、1筋から仕掛けて無理矢理飛車交換に持ち込んだあと、銀冠の特徴である端攻めを繰り出したのである。田口は棋譜を見てこんな仕掛けがあるのか、と思って感動した。

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図6 70手目 先手豊島七段の流れるような攻め

銀冠の長所は銀が端に効いているので端攻めをしても反動が少ないことにある。その長所を遺憾なく活かして豊島七段が攻めを繋げており、竹内四段は完全にされるがまま、といった手順が続く。

図6で豊島七段の次の1手が決め手級の一手ではなかったかと思う。▲9三香。△同桂と取ると▲7三銀と打たれて決まってしまう。しかし、放っておくと▲9二飛の一手詰め。よって△7二玉と早逃げで粘ろうとするも▲9二香成が当たり前だが厳しい追撃で、まさに端攻めのお手本のような手順と思う。うちの激指先生は▲9三香という手は読めていなかったが、指すと評価値がぐんぐん伸びていく好手だった。私もこういう攻めを繰り出せるようになりたいものである。

・・・というわけで、ダイレクト向かい飛車完敗という田口にとってはかなり残念な結果になってしまった。やはり▲7七銀保留型の作戦が有力で、アマチュアにも真似しやすい形に見えるのでこの作戦の対策を用意するのは急務と言えるだろう。(とはいえ、この棋譜見て覚えているアマチュアが沢山いるとも思えないが笑)。やはり個人的には図4の局面が瞬間的に先手の形が不安定なので気になるところである。無理やり暴れていく順はないかを少し掘り下げてみようと思う。

※1 大石直嗣「ダイレクト向かい飛車最新実戦ガイド」 ダイレクト向かい飛車を多用している大石直嗣六段による講座+自戦解説。▲7七銀保留型は対伊奈六段戦で伊奈六段が披露した優秀な構想として紹介されている。ただし、伊奈六段は本譜の▲3六歩ではなく▲5八金と指している。

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