3月17日の将棋

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図1:13手目 先手横歩取り回避の▲2四飛

今回田口は後手である。いつもは早指しだが今回は持ち時間15分秒読み1分での対局を行った。今回もダイレクト向かい飛車を志向した4手目△9四歩に対して▲9六歩と受けられてしまったので横歩取りを採用した・・・つもりだったのだが、先手からの変化球で取れる横歩を取らずに飛車を引いた。かつて故・米長邦雄永世棋聖はこの取れる横歩を取らないのは肝が小さいという旨の話をされた記憶がある。

精神論抜きにしても、実際プロ間ではこの局面で後手の方が手段が増えるため先手のメリットが消えると見られているが、アマチュア的には横歩取りより相掛かりが得意な方ならこの局面に誘導するメリットはあるのではないかと個人的には考えている。実際横歩取りの定跡には精通していても相掛かり調の将棋はさっぱりなので、かなり動揺した。

 

 

 

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図2:33手目 先手ひねり飛車採用で4手目△9四歩に注文をつける

先手が横歩を取らない手の真の狙いは相掛かり調の将棋にすることではなく、ひねり飛車にすることだった。

ひねり飛車というのは居飛車の出だしから図2のように飛車を転換して石田流のような形をつくる戦法である。横歩取り系の将棋で用いられる。

おそらく先手の方の考えとして、9筋の交換を先手にとってプラスにするにはひねり飛車を採用することで、先手の▲9六歩は角が9七の地点に行けるが、後手の△9四歩はそれに比べるとプラスにはなっていないでしょう、ということだろうと推察した。

非常に理にかなっているなぁ、と感心したがひねり飛車はプロ間では勝率があまり高くない戦法であり、また田口はひねり飛車対策を得意にしている。確かに△9四歩は不急の一手なので普通のひねり飛車に比べると損ではあるが、その程度の損でも問題ないと考えている。

 

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図3:49手目 先手無理気味の仕掛け

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先手の方がもう少し組み合うべき所でいきなり仕掛けられた。図3の局面では△同銀、△7五歩、△同桂の3つの選択肢が思いついた。

 

参考図1:50手目7五歩からの楽観的な読み(60手目)

田口は基本的に穏やかな順から考えてしまうのでまず△同銀を考えたが、先を読もうと思ってもお互いに候補手は多いのに有効手がない難解な将棋になりそうで却下した。(局後の検討で、ソフトの評価値は後手+30程度で互角)

次に△7五歩で、相手に仕掛けられた時点では△7五歩を読んでいた。実際の読みの一例として飛車と桂をお互い取り合って先手が両取りを掛けたところで鋭いカウンターを決める!という参考図1までの楽観的な読み筋を考えていたが、先手が飛車交換後すぐに桂馬を取らずに▲6五桂という手が好手で、難解だということに気づいた。(ソフトの評価値は後手+300程度で後手有利)

△7五歩が難解なので、△同桂という手も考えてみようとなった。一目▲7四歩で桂頭狙われて良くないと思っていたが、7三にと金作られても少し読んだら大丈夫なことに気づいた。そこで実戦では大して読まずに△同桂と指した。(実際ソフトの評価値は後手+700で後手優勢。最善手)

△7五歩の変化を4~5分くらい掛けて4~50手くらい読んだのだが、1分くらいで思いついた△同桂の方が良い手だったということだ(計5分50秒この一手に要した)。おそらく30秒将棋だったら△7五歩と指してたので15分将棋の効果が出たといえる局面である。

 

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図4:66手目 気持ちよすぎる△7四桂

中盤私にも小ミスは有ったのだが、咎められることなく進み、「こうなればこっちが良くなりそう」と思っていた読み筋通りにスラスラ進んでとても気分の良い将棋だった。この△7四桂は4手前あたりから読んでいたが、まさかその通りに進んでしまうとは、という感じでディスプレイを前にしてニヤニヤしていた。

この場面で先手の方も長考されて、▲8五歩、△同飛、▲7六金(!)という勝負手を繰り出されてきたが、相手が長考されたのでもしかしてこの順が来るのでは、と思い予め読んでいたので、少考で△同歩、▲8五龍、△8六角と指すことができた。

不運なことに、8六角が6八の銀取りになっているのである。先手は二枚飛車で攻めようにも6一に底歩が効くので効果が薄い。後手勝勢になった。

 

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図5:119手目 度重なる詰みを逃した末…

私なら投了、という局面から30手以上続いてしまったのは田口の詰ます力の弱さに他ならない。この図に至るまでに3~4度詰みを逃している。先手は攻め駒がなく、負ける心配がないとはいえ、詰みを逃し過ぎである。大いに反省したい。

この局面で△5九龍と香車取ろうか迷ったが、流石に詰まさなきゃだめだ、と気を入れなおして読んでようやっと△6七龍からの詰みを発見できた。

以下、▲5七香、△5八銀、▲4六玉、△3五香、▲同桂、△同歩で先手の方は投了された。どう逃げてもあと4手で詰むのでわからない方は盤を並べて考えていただきたい。

本局は得意の対ひねり飛車で快勝を収めることができた。24で三段を維持できているのは自信になる。あとはもう少し詰む詰まないの局面で上手くさせるようになれれば、と思っているが詰将棋をもっとこなさなければいけないだろう。まだまだ道は遠く険しい。

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