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ブログ(仮)から名称が変わりました

田口の考える藤井四段の凄さ-はじめに-

最近藤井四段の目覚ましい活躍が大々的に報道されたことで、田口も将棋の話をする機会が増えて嬉しく思っています。

そこで毎回聞かれる質問が「藤井四段って本当に凄いの?」というものです。またマスコミが無理矢理持ち上げているだけなのではないか、と思っている人も少なからずいるように見受けられます。

結論から言うと、とてつもない天才です。多くのプロ棋士の見解やコンピュータソフトによる棋譜解析、あと多少の田口の独断と偏見を加えると現時点の実力は低く見て現役でTOP5以内、高く見れば既に現役最強(とあるソフトの棋譜解析研究では2位と結構差が有り藤井四段がトップだった)、でも全盛期羽生にはまだ達してない、という実力ではないかと思っています。

まだ藤井四段の棋譜が少ないので一概には評価しきれませんが、一局指す度に強くなっている印象を受けるので、名実ともに将棋界のトップに君臨する日はそう遠くないのではないかと思います。

では将棋の技術的に藤井四段は何が優れているのか、次回から序中盤編と終盤編に分けて投稿しようと思います。

DTMを始めよう2

相変わらずbeatmaniaの熱が冷めないため、プレイステーション用のbeatmania専用コントローラーをネットオークションで落札して遊んでいます。そのおかげでゲーセンに行く頻度が若干下がりました。現在はSPは相変わらず六段のままですが、DPが五段になりました。始めて1年ちょいでここまで上達できると思ってなかったのですが、それでもゲーセンにいる人たちは自分より上手い人ばかりなのでもっと上手くなりたいな、と思っています。

・・・ということで、自宅でbeatmaniaをする時間が増えてしまったためDTM制作の時間がめっきりなくなっています。

今回の投稿では、Studio one、FL studio、Cubase、Ableton liveの4つの無料版(体験版)で同じ曲を作って比較しようと思っていたのですが、CubaseとAbleton Liveは体験版が30日間しか使用できないにも拘わらず、その30日間の間モチベーションが上がらず放置という体たらくだったためにStudio oneとFL studioの2つの比較になってしまいました。

 

曲1:studio one で作った凛として咲く花の如く

曲2:FLstudioで作った凛として咲く花の如く

 

各々のDAWについての所感ですが、まずStudio Oneについて。

無料版でも制限が少ないのが最大の長所だと思います。あとわかりやすい解説書がkindle unlimitedだと無料で手に入るのも大きいです。インターフェースも直感的に分かりやすいので、初心者向けのDAWという印象を持ちました。

ただ、逆に欠点を上げると、お金がかからなくて気軽という部分以外の長所がないです。沢山の音色を使った音楽を作ろうとすると他のDAWに比べて不便だと思います(具体的な理由は長くなるのでここでは割愛)。また、無料版とはいえ、音色数が少なく、リバーブなどのエフェクトもかけられないのも気になりました。

次にFLstudioについて。

まず最大の欠点が体験版だと保存ができないことです。ですので、音楽制作中はパソコンつけっぱなしです。Windowsが勝手に更新しないかとか、コンセントはちゃんとささっているかとか心配しながらの制作になります。また、世界シェアはNo.1のDAWなのですが、日本ではシェアがTOP5にも入らないほど低いため、FLstudioの日本語解説が少ないことも短所です。

長所はとにかくダンスミュージックに強いことです。

無料版でも音源が多く、特にエレクトロサウンドの音が充実している印象なのでダンスミュージックを楽しみたいならFLstudioが良いと思います。またドラムの音が作りやすいのも特徴です。

図1:FLstudioの制作画面

上の図は簡単なエイトビートの一例です。kickとかhatなどドラムの楽器名が書いてあり、それをクリックするだけで良いのでかなり簡単です。

個人的には音楽作りを無料で少し楽しめれば良いや、という人はstudio one、今後本格的に有料版にも手を出すくらいやり込みたい人ならFLstudioかなという印象を受けました。

現在は音楽作りよりも他の趣味を優先してしまっていますが、「おい田口!音楽作ろうぜ!」っていう人が連絡ください。喜んで音楽作りを再開すると思います。

ではでは。

DTMを始めよう!

beatmaniaを始めて1年近く経ちますが、今なお熱は冷めず段位も前回beatmaniaの記事を投稿したときからSP/DPともに一段ずつ上がってSP六段、DP二段になりました!DP三段がもう少しでクリアできそうなので隙きあらばゲーセン、という日々を過ごしています。(とはいっても週2回程度ですが)

 

そんなこんなで田口は音ゲーの音楽をいたく気に入ったので、もういっそ自分でも音ゲーに収録されているような音楽を作ってみよう!と思い至りました。今回の記事ではここ1ヶ月半くらいの自分の取り組みをまとめます。

 

まずパソコンを使って音楽を作るためには何が必要なのかをググりました。するとDTMという言葉にすぐ行き着きます。

DTMとはデスクトップミュージックの略称の和製英語でDTM関連の書籍やブログを散見することができます。(ちなみに英語圏では素直にコンピュータ・ミュージックだそう)

よくわからなかったのでとりあえずDTMや音楽理論の関連書籍を片っ端から読みました。個人的におすすめは著:侘美秀俊「できるゼロからはじめるパソコン音楽制作超入門」です。Amazon Kindle unlimitedでなら無料で読むことができます。

 

次に音楽制作ソフトを用意します。

DTMではDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれるソフトを使うのが一般的です。このDAWには数多くの種類があり無料のものから10万くらいする高額のものまであるのですが、前述の著書に無料で使えるDAWソフトとして紹介された「Studio one」の無料版をダウンロードしました。

これでもう音楽制作は可能なのですが、マウスかキーボードで音を打ち込んでいくのは面倒ということで、MIDIキーボードも購入しました。(うっかり1万くらいするものを購入してしまいましたが、今の私には明らかにオーバースペックです。初心者のうちは3,000円くらいので十分だと思います。)

 

これで音楽制作の環境は整ったのですが、何をどう作れば良いのかわかりません。何かお手本が無いかな~と調べていると3月15日に日向美ビタースイーツのバンドスコアが発売との情報が!

http://www.rittor-music.co.jp/score/16243004.html

日向美ビタースイーツのバンドスコアのリンク

日向美ビタースイーツとはKONAMIの音ゲーに登場する5人組のキャラクターによるガールズバンドです(実在はしていません)。

音ゲーみたいな曲を作りたいと思っていた私にとっては願ってもない吉報でした。早速購入し、スコアを写経の如く打ち込んでいきます。

図:音楽の制作画面

そうしてまずできたのが下の曲です。

曲1:滅びに至るエランプシス

ちなみに本家の曲はこんな感じです

(プチ自慢ですが私もこの曲なら99万点/100万点満点なら出せます)

本家と比べるとちゃんとスコア通りに打ち込んでいるにも拘らず曲の印象が大きく違うのがわかります。楽器の演奏に人間味がないことやそれぞれの楽器の音の大きさも曲の印象には大きな影響を与えているんだなということに気付かされました。

早速反省を活かして2曲目にとりかかります。

滅びに至るエランプシスではトラック数(≒楽器数)は8でしたが、思い切って16に増やしました!結構面倒でした…

そうしてできたのが下になります。

曲2:チョコレートスマイル

ちなみに本家

(またもプチ自慢ですが、ポップンはあまりやってない自分もこの動画の譜面をゲージの減りにくいeasyモードですが、クリアできました!)

滅びに至るエランプシスよりはチョコレートスマイルの方がうまく音を作れたんじゃないかとは思いますが、まだまだ改善したいところが多くあるので、3曲目ではそこも改善していけたらなと思っています。

いずれはエレクトロサウンド全開のオリジナル曲を作れるようになれたら良いなぁという夢を持ちつつ、音楽作りを楽しんでいこうと思っています。

興味のある方は是非コメントください!一緒に音楽を作りましょう!

ゲーム理論でバドミントンを考える-その5-

いままでのあらすじ:

・ナッシュ均衡とは・・・
「どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ」

・ナッシュ均衡がゲームの解

・複数の戦略を確率的に選ぶことを混合戦略という

・混合戦略のナッシュ均衡を求めるのは数式が沢山でてきて大変

 

難易度的に前回あたりから急激に上がったと思うので、読んでもらえるかどうか心配です。今回は前回の考察から始めようと思います。

サーバー \ レシーバー 前に張る どちらにも張らない 後ろに張る
ショートサービス (25,75) (45,55) (65,35)
ロングサービス (90,10) (45,55) (20,80)

図1:再掲 サービスの種類とレシーバーの読みの利得行列

この場合のナッシュ均衡は

サーバー :ショートサービスを5/9~9/13の確率で打つ
レシーバー:どちらにも張らない

となりました。サーバーの確率が約56~69%とブレているのはレシーバーのどちらにも張らない場合の得点期待値を同じにしていることに起因します。

今回の例では非常に簡素な利得行列でバドミントンの深淵には全然迫れていないとは思いますが、以下の3点のことはわかります。

・サーバーはレシーバーに打つコースを読まれないよう散らすのが良い

・レシーバーがサーバーが色んなコースに打つのに対し、バランス良く構えるのが良い

・逆に、相手がどちらかに偏った配球だったり読みをしているならば、徹底して咎めに行くべき

当たり前と言えば当たり前のことかもしれませんが、ゲーム理論によって再確認できました。

 

では次に今回の例の課題を見ていきます。少なくとも自分としては以下の3点が問題だと考えます。

・計算が面倒

・打てるショットの選択肢が少ない

・得点期待値が田口の感覚すぎる

他にも課題はありますが、とりあえずこの3点について調べていきます。

 

まず計算が面倒という点ですが、今回の例は律儀に教科書通りの解き方をしたことに問題がありました。

以下のリンクを参照ください。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1hn98N-ZXiIPBdanW2ISkGsuZiXR7wXgdmFYx9JmKEDI/pubhtml

上のシートではp(ショートサービスの確率)が0.01上がる毎にEr(得点期待値)がどのように変化するかを列挙したものです。

この表をみると0.56~0.69までの間が値が小さくなっているのでナッシュ均衡だな、と見て取ることができます。

一見面倒そうに見えますが、一々計算するよりは遥かに簡単です。また、これを応用しないとこれ以上複雑な問題に中々対応できないんじゃないかと思います。

 

次に、打てるショットの選択肢の問題ですが、一つ増やして選択肢が3×3のパターンを調べてみましょう。

先手 \ 後手 前に走る ドライブ戦用意 後方警戒
ドライブ +5 -5 +20
ネット前に落とす -50 +10 +40
高く上げる +40 -15 -50

図2:先手からみた得点期待値の利得行列

場面としてはダブルスで互いにサイドバイサイドで正面にドライブか落とすか上げるかの3択、それに対して守る方はどこに意識を置くかという問題を考えます。

この問題のナッシュ均衡の求め方は

ドライブ: 0%, 0%, 0%・・・
落とし : 0%, 1%, 2%・・・
上げる :100%, 99%, 98%・・・

という風に先手後手ともに1%ずつ変えて調べます。
久しぶりにプログラムを書きましたが、たかだた100行くらいのプログラムに大苦戦しました。(しかも完成品も問題だらけで研究室でこんなの書いたら怒られるレベル)

図3:プログラムの結果出力

とはいえ、計算は実行を押せばすぐにしてくれるので、自分自身で計算する煩わしさから解放されたのだけでも良しとします。

先程の利得行列のナッシュ均衡は

先手:ドライブ66% 落とす 22% 上げる 12%
後手:前に走る22% ドライブ78% 後方警戒 0%

という結果が出ました。※1

プログラミングの出来る人の力と計算数が増えても大丈夫なPCのスペックがあれば、打てるショットの数を増やしてもナッシュ均衡を求めることが出来そうな気はします。

 

最後に正確な得点期待値の求め方の問題です。これが文句なしに最難関だと思います。一番簡単そうなサービス周りの得点期待値を出すのにもひたすら統計取れば良いのか、それとも大量の映像を撮って機械学習させるのか。少なくとも今の自分にはどう考えれば良いのか見当もつかないです。まして、複雑なラリー中の得点期待値なんて求められるようになるのでしょうか。

 

・・・というわけで、ゲーム理論について長々書いてきましたがいかがでしたでしょうか。話の難易度の急激なインフレが起きてしまったような気もしないでもないですが、個人的にはバドミントンの配球に対する新たな発見をいくつか得ることができたので満足しています。

私以上に情熱を持ってゲーム理論×バドミントンの問題を考えてくれる人に出会えたらこの問題についてもう一度真剣に取り組みたいと思いますが、とりあえずここで一旦お終いにします。また別の遊び(?)を見つけたので、それなりの習熟度に達したらこのサイトに記事を投稿するかもしれません。

ご意見ご感想お待ちしております。ではでは。

※参考文献

川越敏司「はじめてのゲーム理論」

渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」

ゲーム理論でバドミントンを考える-その4-

いままでのあらすじ:

・ナッシュ均衡とは・・・
「どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ」

・ナッシュ均衡がゲームの解

・複数の戦略を確率的に選ぶことを混合戦略という

・混合戦略のナッシュ均衡を求めるのは数式が沢山でてきて大変

 

・・・とりあえずその3までの内容をまとめました。

というわけで、まずは前回唐突に書いた利得行列を再掲します。

サーバー \ レシーバー 前に張る どちらにも張らない 後ろに張る
ショートサービス (25,75) (45,55) (65,35)
ロングサービス (90,10) (45,55) (20,80)

単位:%
図1:再掲 サービスの種類とレシーバーの読みの利得行列

この利得行列は何なのか、例として左上の(25,75)について説明します。

(25,75)は一番左の列に「ショートサービス」一番上の行に「前に張る」とあるので、サーバーがショートサービスを打って、かつレシーバーがヤマを張って前に突っ込んできた場合のそれぞれの得点期待値を意味しています。つまり、レシーバーの読みが当たってレシーバー有利のラリーになるためサーバーとレシーバーが1点取れる確率はそれぞれ25%、75%ということを意味しています(なので、それぞれの得点期待値は1点×25%と1点×75%ということになります)。

他のケースも同様にレシーバーの読みが当たればレシーバー有利、レシーバーの読みが外れればサーバー有利になっています。

このような場合、サーバーはどのような確率でショートサービスとロングサービスを混ぜ、レシーバーはどのような読みを利かすのが良いのでしょうか。

この問題のナッシュ均衡を求め方として、まずはレシーバー目線に立った最善策を求め、次にレシーバーが最善を尽くしてくる際にサーバーはどうするのが最善か、を求めることによって調べます。

ということで、問題をわかりやすくするために図1をレシーバー目線から見た利得行列に変えてみます。

サーバー \ レシーバー 前に張る どちらにも張らない 後ろに張る
ショートサービス +50 +10 -30
ロングサービス -80 +10 +60

単位:%
図2:レシーバーの得点期待値-サーバーの得点期待値の行列

サーバーがショートサービスを打つ確率をp、レシーバーの得点期待値-サーバーの得点期待値をErとします。今回の問題ではサーバーはショートサービスとロングサービスしか戦略がないのでロングサービスの確率は1-pとなります。また、サーバーの得点期待値は1-Erとなります。

レシーバーの戦略の得点期待値をpを用いて表すと以下のようになります。

前に張る     :50×p – 80×(1-p) = 130p-80 …(1)
どちらにも張らない:10×p + 10×(1-p) = 10     …(2)
後ろに張る    :-30×p + 60×(1-p) = -90p+60  …(3)

レシーバーが前に張る、どちらにも張らない、後ろに張る確率をそれぞれq1,q2,q3としてそれぞれの戦略について考えていきます。

サーバーがどちらかのサービスしか用いないのならばそちらにヤマを張っていれば良いことはわかります。ではどのくらいの確率までならヤマを張って良いのかを調べます。

・常に前に張り続ける(q1=1)が得の場合

上で出した、pを用いた得点期待値(1)~(3)を使います。

常に前に貼り続けるのが得ということは(1)>(2)かつ(1)>(3)が成り立っているときです。
(1)>(2)を解くと p>9/13
(1)>(3)を解くと p>7/14
これらを同時に満たすのはp>9/13の時です。つまりpが9/13以上ならば常にショートサービス読みで突っ込んだほうが良いということになります。

・常にヤマを張らない(q2=1)のが得の場合

(2)>(1)かつ(2)>(3)が同時に成り立っているときなので
(2)>(1)を解くと p<9/13
(2)>(3)を解くと p>5/9
これらを同時に満たすのは5/9<p<9/13の時です。

・常に後ろに張り続ける(q3=1)が得の場合

(3)>(1)かつ(3)>(2)が同時に成り立っているときなので
(3)>(1)を解くと p<7/14
(3)>(2)を解くと p<5/9
これらを同時に満たすのはp<5/9の時です。

これらを用いてpとレシーバーの得点期待値Erのグラフを描いてみましょう。

図3:p-Erのグラフ

サーバーの得点期待値は1-Erなので、青点線のようになります。図3を見ると、サーバー側からすると、レシーバーが最善を尽くしてくる際にはショートサービスの確率pは5/9から9/13の間にするのが自身の得点期待値を上げる最善策となります。

よって求めるナッシュ均衡は

サーバー :ショートサービスを5/9~9/13の確率で打つ
レシーバー:どちらにも張らない

という戦略の組み合わせになります。

いかがでしたでしょうか。長くなってきたので今回の結果の自分なりの考察や課題については次回に書こうと思います。

意見や考察、間違いの指摘など何でもいいので返信頂けると幸いです。よろしくお願いします。

※参考文献

川越敏司「はじめてのゲーム理論」

渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」

ゲーム理論でバドミントンを考える-その3-

久しぶりに方程式というものを書きました。学生って凄いなって思いました。

ということで、今回はまずじゃんけんについて考えます。

じゃんけんは相手がグーを出すときはパーを出すのが最善、パーを出せばチョキを出すのが最善、チョキを出せばグーを出すのが最善・・・とグルグル回って前回の黒龍会と白龍会の例のように、戦略の組み合わせが定まりません。ではじゃんけんにナッシュ均衡はあるのでしょうか?

結論から言うと「お互いがグー、チョキ、パーをそれぞれ1/3の確率で出す」というのがナッシュ均衡となります。これはゲーム理論云々の話の前に直感的にわかることだと思います。※1

前回の黒龍会と白龍会の例のようにお互いが一つの戦略だけを選ぶことを「純戦略」というのに対し、じゃんけんのように複数の戦略を確率的に選ぶことを「混合戦略」と呼びます。混合戦略も含めたナッシュ均衡を求める際はいくつかの戦略をどのような確率で選ぶか、ということがポイントとなります。

ということで前回の黒龍会と白龍会の渋谷横浜の例をもう一度見てみましょう。

黒龍会 \ 白龍会 渋谷 横浜
渋谷 (40,20) (60,45)
横浜 (45,60) (30,15)

図1:再掲 黒龍会と白龍会の利得行列

前回では黒龍会と白龍会は渋谷と横浜のどっちかを選ぶということしかしませんでしたが、今回は確率的に選ぶということをします。

・黒龍会が渋谷をp、横浜を1-pの確率で選択する
・白龍会が渋谷をq、横浜を1-qの確率で選択する

という混合戦略の組み合わせがナッシュ均衡となるようなpとqを求めます。

黒龍会が渋谷を選んだ時の期待利得は
40×q + 60×(1-q) = -20q + 60

黒龍会が横浜を選んだ時の期待利得は
45×q + 30(1-q) = 15q + 30
となります。

黒龍会の最善策が「渋谷に設立する」(p=1)となるのは
-20q + 60 > 15q + 30 のときで、これを解くとq<6/7 黒龍会の最善策が「横浜に設立する」(p=0)となるのは その逆で q>6/7
q=6/7の場合はpをどのような値に取っても黒龍会の期待利得は同じになります。

上の関係をpを横軸、qを縦軸とした図に表すと下図のようになります。

図2:黒龍会の最適反応戦略

白龍会についても同様の作業を行います。
白龍会が渋谷を選んだ時の期待利得は
20×p + 60×(1-p) = -40q + 60

白龍会が横浜を選んだ時の期待利得は
45×q + 15(1-q) = 30q + 15
となります。

白龍会の最善策が「渋谷に設立する」(q=1)となるのは
-40q + 60 > 30q + 15 のときで、これを解くとq<9/14 白龍会の最善策が「横浜に設立する」(q=0)となるのは その逆で q>9/14
q=9/14の場合はqをどのような値に取っても白龍会の期待利得は同じになります。

上の関係をpを横軸、qを縦軸とした図に表すと下図のようになります。

図3:白龍会の最適反応戦略

図2と図3を組み合わせてみましょう。

図4:図2と図3を組み合わせてわかるナッシュ均衡

このグラフの交点になるpとqの組み合わせがナッシュ均衡です。つまり
(p,q) = (1,0) , (9/14,6/7) , (0,1)
がこのゲームの解となります。

不人気団体の白龍会の方が渋谷を選択する確率が高いというのは、個人的にはかなり意外でした。ただ黒龍会も9/14の確率で渋谷を選択できそうなので一応は一安心といったところです。

・・・そろそろゲーム理論をバドミントンに応用した話を始めましょう。次回は一つの例として以下のような利得行列で表される例を考えます。

サーバー \ レシーバー 前に張る どちらにも張らない 後ろに張る
ショートサービス (25,75) (45,55) (65,35)
ロングサービス (90,10) (45,55) (20,80)


表の数字は得点期待値で、単位は%です。

次回も今回同様計算が多めになりそうです。読んでて辛かったら遠慮なく仰ってください。よろしくお願いします。

※1 このことの証明は面倒なので割愛しました。ただ、全部を1/3で等確率で出さない戦略には相手により良い戦略を与えてしまう(例えばグーとチョキしか出さない相手にはグーを出し続けるなど)ことから、じゃんけんのナッシュ均衡は上の通りであることが分かると思います。

※参考文献

川越敏司「はじめてのゲーム理論」

渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」

ゲーム理論でバドミントンを考える-その2-

サーバ移転にはなんだかんだ1週間近くかかってしまいました。ウェブサイト作り初心者の自分にはタフな作業でしたが、無事に今回記事を投稿できそうで良かったです!

では、今回もゲーム理論についての話をします。

まずは例を一つ。

とあるバドミントン団体である「黒龍会」と「白龍会」は渋谷に設立するか新潟に設立するかで迷っています。ただし、お互いの団体は犬猿の仲でメンバーは重複しないものとします。

渋谷区はバドミントン人口が多いので、バドミントン団体が設立されれば全体で60人ほどの参加者いるものとします。一方新潟はバドミントン人口が少ないので30人ほどの参加者しか見込めません。

黒龍会は白龍会より人気があるため、同じ場所に設立された場合、2/3は黒龍会に、残りの1/3は白龍会に参加するものとします。

この場合、黒龍会と白龍会はそれぞれどこに団体を設立すれば良いでしょうか。

この問題の利得行列を書くと以下のようになります

黒龍会 \ 白龍会 渋谷 新潟
渋谷 (40,20) (60,30)
新潟 (30,60) (20,10)

黒龍会は白龍会が渋谷にに設立しようが新潟に設立しようが関係なしに渋谷に設立する方が参加者増えることが見て取れると思います。

ですので黒竜会は渋谷に設立するのが最善策となります。(このように相手の戦略にかかわらず最善策になる戦略を支配戦略と呼びます。)

一方、白龍会は黒龍会が渋谷に設立することを予想した場合に、渋谷に設立すると20人に対し、新潟に設立すると30人になります。

よって白龍会は新潟に設立するのが最善策となります。

以上から今回の例では、「黒龍会は渋谷、白龍会は新潟に設立する」ということが予想される結果です。ゲーム理論はプレイヤーがどのような行動をするかを予想することを目標としており、この予想される結果を「ゲームの解」と言います。

では渋谷と新潟ではなく、参加者が全体で45人見込める横浜と渋谷ならどうでしょうか。

利得行列を書くと以下のようになります。

黒龍会 \ 白龍会 渋谷 横浜
渋谷 (40,20) (60,45)
横浜 (45,60) (30,15)

黒龍会の立場で見ると、

白龍会が渋谷に設立するときは横浜(45>40)

白龍会が横浜に設立するときは渋谷(60>30)

に設立するのが最善策となります。逆に白龍会の立場で見ると、

黒龍会が渋谷に設立するときは横浜(45>20)

黒龍会が横浜に設立するときは渋谷(60>15)

に設立するのが最善策となります。

このようなゲームの解はジョン・ナッシュという数学者が定義したナッシュ均衡という概念が用いられています。ナッシュ均衡の(大雑把な)定義は「どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ」です。

今回の例で言うと「黒龍会が渋谷、白龍会が横浜に設立する」または「黒龍会が横浜、白龍会が渋谷に設立する」という戦略の組み合わせがナッシュ均衡です。ゲームの解が複数あるのは気持ち悪いかもしれないですが、ナッシュ均衡は複数あることもしばしばです。また先程の渋谷と新潟の例だと「黒龍会が渋谷、白龍会が新潟に設立」が唯一のナッシュ均衡です。

ナッシュ均衡にある場合、一人のプレイヤーが戦略を変えた場合に得になりません。例えば「黒龍会が横浜、白龍会が渋谷」という戦略の組み合わせから、黒龍会が「俺達が横浜なんて気に入らねぇ、渋谷に行ってやる!」と戦略を変えても参加者が45人から40人に減ってしまい、プラスにならない、といった具合です。

・・・以上がナッシュ均衡とは何ぞや、という大雑把な説明です。しかし、人気団体の黒龍会が横浜に飛ばされて、不人気団体の白龍会が渋谷で活動するのがナッシュ均衡の一つというのは納得いかない人もいるのではないでしょうか。実はこのゲームのナッシュ均衡はこの2つだけではありません。

ということで次回は混合戦略の話をしようと思います。是非一緒にゲーム理論を学びましょう!

※参考文献

川越敏司「はじめてのゲーム理論」

渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」

ゲーム理論でバドミントンを考える-その1-

予てから「海城生はIQは高いはずなのにどうしてバドミントンの配球は脳筋なんだろう」という疑問をもっていました。

海城将棋部の実力を見れば私より素晴らしい頭脳を持つ生徒が海城には沢山いることは分かります。ですが、その頭脳をバドミントンには活かされていることが少ないことを残念に思っていました。

そこで頭脳的にバドミントンというスポーツを解析し、実力向上に活かす手段としてゲーム理論を紹介しようと思います。私もゲーム理論を学び始めたのは最近なので、どちらかと言えば私が講義をするというよりかは一緒に学び議論する形になるかなぁと思います(というか、なってほしいです)。

今回はその1ということで、まずはゲーム理論とは何かということについて話したいと思います。

ゲーム理論とは「複数の意思決定をする主体が、その意思決定に関して相互作用する状況を研究する理論」です。もっと端的に言うと「相手がこの手でくるなら自分はこうしよう」を考える理論です。

このゲーム理論の生みの親といえるアメリカの数学者のジョン・フォン・ノイマンは元々トランプのポーカーを分析するためにゲーム理論を生み出しました。現在ではゲーム理論というと経済学を学ぶ際に必須の理論というイメージが広まっていますが、以前従兄弟と話した際「テニスの配球はゲーム理論の影響を受けて進化しているのではないか」という議論になりました。ゲーム理論の応用範囲はプロスポーツの世界にも既に及んでいるものと推察されます。

要は何が言いたいかというと、ゲーム理論は色んな分野で用いられているので一緒に学びましょう、ということです。

1/29の松濤練後に「エクレール ゲーム理論部」を立ち上げました。ラインのグループを作成したので興味の有る方は是非参加下さい!

次回はナッシュ均衡についての話をする予定です。どうぞよろしくお願いします。

※参考文献

川越敏司「はじめてのゲーム理論」

渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」

今年の将棋での抱負

年末年始の連休はひたすら趣味に時間を割いていました。こんな時間がいつまでも続けば幸せだというのに…

 

ということで今回は将棋の話をします。

まずは田口の将棋の近況について

 

shogi

10/29の投稿 でアップしたexcelシートの最新版です。

10月の段階では角換わりで居玉のまま桂を4五に跳ねていたのですが、流石にそれでは成立しないということがわかり、せっかく書いた数百手が無駄になる、という悲しい事態を乗り越えてここまで辿りつきました。

一番充実しているのは後手横歩のシートですが、なかなか想定局面に持ち込めず、勝率の底上げに貢献してくれてはいません。

むしろ角換わりや先手横歩の方が研究量は遥かに少ないですが、勝率の上昇に貢献してくれています。

ただ、内容に関しては角換わりと先手横歩では異なっています。

角換わりのシートを作ったのは、もともと竜王戦第1局を見てから先手を持って勝つためにはどうすれば良かったのかをソフトと調べ始めたのがきっかけした。似たような仕掛けは現在プロ間でも非常によく指されている形なので、アマチュア間にも広がりを見せています。今のところ同じ棋力のプレーヤー相手ならば研究量で勝てているので角換わりの勝率の上昇につながっています。

一方、先手横歩は横歩を取らずに▲5八玉という電王戦第1局のPonanzaのパクリの手を採用しており、自分以外のプレーヤーがあまり使わない手なので、24で三段や四段のプレーヤー相手でも30手満たずに作戦勝ちということもしばしばあります。要はわからん殺しです。

2つの戦法での勝った時を比較したときに、角換わりでは相手もそれなりの手を指している中でそれを上回る手を指して勝つことが出来るのでやはり気分が良いです。一方、先手横歩では相手が早々に悪手を指してくれて、そのリードを保てば勝てる、という内容なので釈然としない感じはあります。ただ、真っ向勝負で横歩を取って4五角急戦や相横歩のような奇襲戦法に負けるのは尚更癪なので▲5八玉を指しているという状況です。

この間従兄弟と指したときに教えてもらった、横歩取り青野流▲6八玉型が面白そうなので指してみたいのですが、奇襲戦法の対策を覚えるのがかったるいのでしょうがないですね。

・・・対抗形に関してはもう諦めています。横歩取りや角換わりに比べて研究する気が沸かないのが問題です。振飛車党の有段者の方で一緒にソフトで研究してくれる方いませんか?

近況についてはひとしきり語ったので最後に今年の将棋についての抱負です。

1日に10局以上指さない

ということです。藤井九段が自身の上達法について「自分より少し弱い相手と指すのが一番勉強になる」「負けた将棋より勝った将棋で反省した方が良い」「実戦の指し過ぎに注意」ということを昨年末におっしゃっていたので、今年は私もそれに倣おうと思います。

beatmaniaⅡDXというゲームについての考察-上達編-

新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします!

床波の部屋では新年の挨拶をしていて、自分もそれに続こうかと思ったものの本投稿を書き始めていたので、新年早々beatmaniaの投稿が2017年の第1弾の投稿になります。なんかすみません。

 

beatmaniaⅡDXでは段位認定モードというものがあり、それにクリアすると段位が与えられる。

将棋では四段を持っているので、beatmaniaでも五段を取って「もう将棋よりbeatmaniaの方が段位が上になったわー」と言えるように頑張ろうと思い至ってしまった結果、現在ではSP五段DP1級となり、SPでは無事(?)将棋の段位を上回ることができた!(一応補足として、当然だが将棋四段の方が遥かに難易度は高い)

いきなりSPやらDPやら謎のワードが出てきてしまったが、説明すると、SPというのはシングルプレイの略で7個の鍵盤と1枚のターンディスクでプレイする一般的なモードだ。一方、DPというのはダブルプレイの略で2P用の鍵盤やターンディスクも使用する、つまり14個の鍵盤と2枚のターンディスクも使用するモードだ。今後はDPでも将棋の段位を超えられるよう練習したい。

とはいえ、ゲーセンに行くと大抵自分より上手いプレーヤーばかりで、まだまだ初心者であることを痛感させられるわけだが、ここまで自分の上達の過程を書くことで、beatmaniaでの更なる成長は勿論、他分野での成長プロセスに応用できるための糧にできればと思う。

まずbeatmaniaを始めた際、このゲームに求められる能力とは何か、ということを考えたときに以下の4つが挙げられると思った。

  1. 見えない位置にある鍵盤を押すための空間認識能力
  2. リズムよく鍵盤を叩くためのリズム感
  3. 思い通りに指を動かすための運指能力
  4. 大量の音符を識別するための情報処理能力

このうち、1の空間認識能力についてはbeatmaniaの筐体に触ることで感覚的に覚えていくしかなさそうなので、特別なことはしなかった。

2のリズム感に関しては、当団体のメンバーのピアノ経験者にリズム感を向上するために行った練習法を聞いてみたところ、メトロノームを使ってそのリズムに合わせて指を動かすトレーニングをしたという回答が返ってきて、とてもじゃないが真似できないと思い、特別な練習は行わないことにした。

ただ、beatmaniaⅡDXのサントラは毎日のように聞いている。いざゲーセンでプレイするときにはその曲がどんな曲か知っておくことは有効だ。

3の運指能力の向上に関しては、まずyoutubeに上がっているトッププレイヤーの動画を見て分析するところから始めた。

これはbeatmaniaだけでなくバドミントンでも将棋でもどの分野にも共通することだが、上手い人の技を盗むのが上達の一番の近道だ。

しかし、当然だがトッププレイヤーと同じような運指をしようとしてもできない箇所が出てくる。どうしても再現できない運指についての打開策を教えてもらうために当団体のピアノ経験者数人に質問をした(具体的には小指と薬指のトリルについて)。自分にできない運指はアマチュアレベルでは再現できないような高難度のものなのか、それともある程度のピアノ経験者なら再現できるレベルのものなのかが知りたかったからだ。

質問の結果、田口の疑問に思っていた運指はアマチュアでも再現できるレベルのものという回答を得たので、普段から音楽を聞く際は指を動かす(特に小指と薬指)よう心がけるようになった。

4の情報処理能力についてだが、視野の変えることによって情報処理能力が大きく変わるということを経験した。下の図1,図2を見てもらいたい。

図1:初段程度の頃の田口の視野

図2:現在の田口の視野

黄枠で囲った部分が田口の視野である。習熟度の低い段階では、音符を線で重なったところで押そうという一心で線のあたりを見てしまっている。が、あるときふと視野をあげて線よりも視点を大分上の部分を広く見るようにしてみたところ、沢山の音符を同時に認識できるようになり、クリアできる曲の難易度が上がった。

個人的には大発見だったのだが、どうやらピアノ経験者には当たり前のことで、ピアノを引く際、実際に弾いてる部分よりも先の楽譜を視認しているのと同じことがbeatmaniaでもできるようになっただけの話だった。

 

・・・以上が現在までの田口のbeatmaniaの上達過程のまとめである。最後に現在自身の考える課題とそれに対する現在の取り組みについて書いて本投稿を締める。

課題1:DPの際に間違った鍵盤を押すことが多い(空間認識能力不足)

取り組み:空間認識能力を意識しながらプレイする。(漫然とプレイするより鍵盤の位置を頭の中でイメージする方が良い気がする)

課題2:押す鍵盤の量が増えてきたため押した鍵盤の音が認識できない(音の情報処理能力不足)

取り組み:普段音楽を聞く際に色んな音を意識する習慣づけをする

課題3:DPでの左手の運指が上手くいかない(運指能力不足)

取り組み:今まで右手の指ばかり動かしてきたが、左手の指でもリズムよく動かす習慣づけをする