サーバ移転にはなんだかんだ1週間近くかかってしまいました。ウェブサイト作り初心者の自分にはタフな作業でしたが、無事に今回記事を投稿できそうで良かったです!
では、今回もゲーム理論についての話をします。
まずは例を一つ。
とあるバドミントン団体である「黒龍会」と「白龍会」は渋谷に設立するか新潟に設立するかで迷っています。ただし、お互いの団体は犬猿の仲でメンバーは重複しないものとします。
渋谷区はバドミントン人口が多いので、バドミントン団体が設立されれば全体で60人ほどの参加者いるものとします。一方新潟はバドミントン人口が少ないので30人ほどの参加者しか見込めません。
黒龍会は白龍会より人気があるため、同じ場所に設立された場合、2/3は黒龍会に、残りの1/3は白龍会に参加するものとします。
この場合、黒龍会と白龍会はそれぞれどこに団体を設立すれば良いでしょうか。
この問題の利得行列を書くと以下のようになります
黒龍会 \ 白龍会 | 渋谷 | 新潟 |
渋谷 | (40,20) | (60,30) |
新潟 | (30,60) | (20,10) |
黒龍会は白龍会が渋谷にに設立しようが新潟に設立しようが関係なしに渋谷に設立する方が参加者増えることが見て取れると思います。
ですので黒竜会は渋谷に設立するのが最善策となります。(このように相手の戦略にかかわらず最善策になる戦略を支配戦略と呼びます。)
一方、白龍会は黒龍会が渋谷に設立することを予想した場合に、渋谷に設立すると20人に対し、新潟に設立すると30人になります。
よって白龍会は新潟に設立するのが最善策となります。
以上から今回の例では、「黒龍会は渋谷、白龍会は新潟に設立する」ということが予想される結果です。ゲーム理論はプレイヤーがどのような行動をするかを予想することを目標としており、この予想される結果を「ゲームの解」と言います。
では渋谷と新潟ではなく、参加者が全体で45人見込める横浜と渋谷ならどうでしょうか。
利得行列を書くと以下のようになります。
黒龍会 \ 白龍会 | 渋谷 | 横浜 |
渋谷 | (40,20) | (60,45) |
横浜 | (45,60) | (30,15) |
黒龍会の立場で見ると、
白龍会が渋谷に設立するときは横浜(45>40)
白龍会が横浜に設立するときは渋谷(60>30)
に設立するのが最善策となります。逆に白龍会の立場で見ると、
黒龍会が渋谷に設立するときは横浜(45>20)
黒龍会が横浜に設立するときは渋谷(60>15)
に設立するのが最善策となります。
このようなゲームの解はジョン・ナッシュという数学者が定義したナッシュ均衡という概念が用いられています。ナッシュ均衡の(大雑把な)定義は「どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ」です。
今回の例で言うと「黒龍会が渋谷、白龍会が横浜に設立する」または「黒龍会が横浜、白龍会が渋谷に設立する」という戦略の組み合わせがナッシュ均衡です。ゲームの解が複数あるのは気持ち悪いかもしれないですが、ナッシュ均衡は複数あることもしばしばです。また先程の渋谷と新潟の例だと「黒龍会が渋谷、白龍会が新潟に設立」が唯一のナッシュ均衡です。
ナッシュ均衡にある場合、一人のプレイヤーが戦略を変えた場合に得になりません。例えば「黒龍会が横浜、白龍会が渋谷」という戦略の組み合わせから、黒龍会が「俺達が横浜なんて気に入らねぇ、渋谷に行ってやる!」と戦略を変えても参加者が45人から40人に減ってしまい、プラスにならない、といった具合です。
・・・以上がナッシュ均衡とは何ぞや、という大雑把な説明です。しかし、人気団体の黒龍会が横浜に飛ばされて、不人気団体の白龍会が渋谷で活動するのがナッシュ均衡の一つというのは納得いかない人もいるのではないでしょうか。実はこのゲームのナッシュ均衡はこの2つだけではありません。
ということで次回は混合戦略の話をしようと思います。是非一緒にゲーム理論を学びましょう!
※参考文献
川越敏司「はじめてのゲーム理論」
渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」
将棋の定跡もゲーム理論的に言い換えれば「現在ナッシュ均衡と思われている指し手の手順」と言えますね。
定跡から逸れた側は定跡通りに進めるより損をする(と思われている)ので。
一時期お互いに矢倉囲いに組む相矢倉という戦法で「91手定跡」と呼ばれる、91手までずっと続く定跡が出てきた時は覚えるのが大変だった記憶があります。プロ間では4局指されて4局とも先手勝ちだったと記憶していますが、私はネットで指して後手で勝ったことがあります笑
現在では後手は美濃に組んだり途中で変化するので91手定跡はもう見ることなさそうですね。
こういう場合もナッシュ均衡というんだね、勉強になりました。次回も楽しみにしてます。