ゲーム理論でバドミントンを考える-その4-

いままでのあらすじ:

・ナッシュ均衡とは・・・
「どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ」

・ナッシュ均衡がゲームの解

・複数の戦略を確率的に選ぶことを混合戦略という

・混合戦略のナッシュ均衡を求めるのは数式が沢山でてきて大変

 

・・・とりあえずその3までの内容をまとめました。

というわけで、まずは前回唐突に書いた利得行列を再掲します。

サーバー \ レシーバー 前に張る どちらにも張らない 後ろに張る
ショートサービス (25,75) (45,55) (65,35)
ロングサービス (90,10) (45,55) (20,80)

単位:%
図1:再掲 サービスの種類とレシーバーの読みの利得行列

この利得行列は何なのか、例として左上の(25,75)について説明します。

(25,75)は一番左の列に「ショートサービス」一番上の行に「前に張る」とあるので、サーバーがショートサービスを打って、かつレシーバーがヤマを張って前に突っ込んできた場合のそれぞれの得点期待値を意味しています。つまり、レシーバーの読みが当たってレシーバー有利のラリーになるためサーバーとレシーバーが1点取れる確率はそれぞれ25%、75%ということを意味しています(なので、それぞれの得点期待値は1点×25%と1点×75%ということになります)。

他のケースも同様にレシーバーの読みが当たればレシーバー有利、レシーバーの読みが外れればサーバー有利になっています。

このような場合、サーバーはどのような確率でショートサービスとロングサービスを混ぜ、レシーバーはどのような読みを利かすのが良いのでしょうか。

この問題のナッシュ均衡を求め方として、まずはレシーバー目線に立った最善策を求め、次にレシーバーが最善を尽くしてくる際にサーバーはどうするのが最善か、を求めることによって調べます。

ということで、問題をわかりやすくするために図1をレシーバー目線から見た利得行列に変えてみます。

サーバー \ レシーバー 前に張る どちらにも張らない 後ろに張る
ショートサービス +50 +10 -30
ロングサービス -80 +10 +60

単位:%
図2:レシーバーの得点期待値-サーバーの得点期待値の行列

サーバーがショートサービスを打つ確率をp、レシーバーの得点期待値-サーバーの得点期待値をErとします。今回の問題ではサーバーはショートサービスとロングサービスしか戦略がないのでロングサービスの確率は1-pとなります。また、サーバーの得点期待値は1-Erとなります。

レシーバーの戦略の得点期待値をpを用いて表すと以下のようになります。

前に張る     :50×p – 80×(1-p) = 130p-80 …(1)
どちらにも張らない:10×p + 10×(1-p) = 10     …(2)
後ろに張る    :-30×p + 60×(1-p) = -90p+60  …(3)

レシーバーが前に張る、どちらにも張らない、後ろに張る確率をそれぞれq1,q2,q3としてそれぞれの戦略について考えていきます。

サーバーがどちらかのサービスしか用いないのならばそちらにヤマを張っていれば良いことはわかります。ではどのくらいの確率までならヤマを張って良いのかを調べます。

・常に前に張り続ける(q1=1)が得の場合

上で出した、pを用いた得点期待値(1)~(3)を使います。

常に前に貼り続けるのが得ということは(1)>(2)かつ(1)>(3)が成り立っているときです。
(1)>(2)を解くと p>9/13
(1)>(3)を解くと p>7/14
これらを同時に満たすのはp>9/13の時です。つまりpが9/13以上ならば常にショートサービス読みで突っ込んだほうが良いということになります。

・常にヤマを張らない(q2=1)のが得の場合

(2)>(1)かつ(2)>(3)が同時に成り立っているときなので
(2)>(1)を解くと p<9/13
(2)>(3)を解くと p>5/9
これらを同時に満たすのは5/9<p<9/13の時です。

・常に後ろに張り続ける(q3=1)が得の場合

(3)>(1)かつ(3)>(2)が同時に成り立っているときなので
(3)>(1)を解くと p<7/14
(3)>(2)を解くと p<5/9
これらを同時に満たすのはp<5/9の時です。

これらを用いてpとレシーバーの得点期待値Erのグラフを描いてみましょう。

図3:p-Erのグラフ

サーバーの得点期待値は1-Erなので、青点線のようになります。図3を見ると、サーバー側からすると、レシーバーが最善を尽くしてくる際にはショートサービスの確率pは5/9から9/13の間にするのが自身の得点期待値を上げる最善策となります。

よって求めるナッシュ均衡は

サーバー :ショートサービスを5/9~9/13の確率で打つ
レシーバー:どちらにも張らない

という戦略の組み合わせになります。

いかがでしたでしょうか。長くなってきたので今回の結果の自分なりの考察や課題については次回に書こうと思います。

意見や考察、間違いの指摘など何でもいいので返信頂けると幸いです。よろしくお願いします。

※参考文献

川越敏司「はじめてのゲーム理論」

渡辺隆裕「ゼミナール ゲーム理論入門」

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