先日NHKの将棋番組で塚田九段(※1)の日常が紹介されたみたいで、自宅で将棋倶楽部24で遊ぶ事があるそうなのだが、なんとレートが3150なのだそうだ。
2000前後で一喜一憂している自分が馬鹿らしく思えてくるとてつもない数字だ。改めてプロ棋士の凄さを実感するとともに、自分にも伸び代はたくさんあるのだとポジティブに捉え、これから精進していきたい。
図1:43手目 居飛穴+右桂の活用
今回田口は先手である。以前本ブログでも紹介した通り、相変わらず右桂を跳ねたがるのが田口の特徴であるが、相手はここからいきなり△5五歩と仕掛けてきた。
これはなんとなくだが、ありがたい仕掛けのように感じた。以下▲4六歩に対し、後手が△5四銀としたのが序盤の大きなミス。当たり前の▲4五桂が厳しく、早くも先手が大きなポイントを上げた。
図2:57手目 相手劣勢からの恐るべき勝負術
57手目の▲5四銀という手は激指先生もニッコリの好手だ。次に▲4五銀と歩を払う手と▲6三銀成△同銀▲5三金の2つの狙いを秘めている。
が、ここで相手は△同金▲同歩△5二歩となけなしの歩を△5二に投資して受けてきた。守りの金が剥がれる+歩切れになる+飛車の横効きが止まるの三重苦の展開なので全く考えていなかった。そのためおそらく△5二歩の次の正着は▲5六銀だったのだが、▲4五歩と歩を払ってしまった。悪手というほどではないが、これは緩手だったと思う。次の△5五桂が後手の狙いだった。以下、▲7七金△4七桂成と攻めこんできた。四間飛車使いは居飛車穴熊を相手にするため中盤の力が強い印象がある。不利になっても勝負型に持ち込もうとする強さを感じた。
図3:76手目 相手痛恨の見落とし(次の一手問題)
が、居飛車穴熊相手に序盤でミスをすると取り返すのは相当力がいることで、図3は例えば▲7八金引としても先手が優勢だと思われる。しかしここで決め手の一手がある。発見できるだろうか。
正解は▲3九金である。なんと相手の飛車がこれで詰んでしまったのである。以下、△2三飛▲4八金△2四飛▲5八金と進んだが、先手陣に相手の攻め駒が一切ない。先手勝勢だ。
図4:84手目 目標にしている”じっと”の手
局面は相変わらず先手勝勢で、図4の局面では有力な候補手がいくつかある。当然飛車を打ち込むような攻めの手でも全く問題ないだろう。
が、ここで田口の指した手は▲7八金。直接的な意味は△5五角▲同銀△6五桂の時に金取りにならないよう予め逃げておいたということだが、2九にいる後手の龍が7九の金を睨んでいるので、7九の金を補強した意味もある。相手に攻めの余地を消す辛い手で、こういう手を指した方が攻め合うよりも逆転の余地がなくなり勝ちやすくなると思う。
図5:93手目 相手に粘らせない寄せ
この形での美濃囲い崩しの手筋として▲6二歩という手はあるのだが、この局面に関してはそれより良い手があった。
▲8五桂が激指先生も最善手とした好手だったようだ。玉の逃げ道を塞ぐことによって、次の▲6二歩の狙いと▲6四歩の狙いが受けづらい。また、3七の角がいなくなると王手龍取りになるリスクがあるのも見逃せない点だ。受けるならば「敵の打ちたい場所に打て」の△6二歩しかなかったと思うが、相手も大して時間を使わず△5一香と指して▲6二歩となったところで相手は投了した。
相手の無理気味の仕掛けに乗じてリードし、中盤小ミスはありながらも▲3九金や▲7八金など、受けの好手でガッチリと勝ちまで持ってくという、まさに今の自分の理想とする勝ち方ができた。戦いが始まってから受けの手を指すのは正確な読みと勇気のいることだが、臆せずに指していければと思う。
※1 塚田泰明九段 攻め100%。昇天流と称される棋風で20代の頃はタイトル獲得、23歳で順位戦A級と輝かしい実績を誇る。しかしながら最近では順位戦はC級1組、竜王戦4組という位置にまで落ちている。将棋ファンからは落ち目と思われているベテラン棋士でさえ、将棋倶楽部24で指すとアマチュアとは比べ物にならないレートをたたき出せることに多くの将棋ファンが驚愕した。ちなみに塚田九段のレートから羽生名人のレートを推測すると3600超えになるとのことだ。