前回は麻雀サイト「天鳳」のレーティングシステムをバドミントンのダブルスに適用した場合を考えた。
今回は将棋サイト「将棋倶楽部24」で用いられている「簡易化されたイロレーティング」を用いた場合を考えてみる。
そもそもイロレーティングとは、チェスで世界的に用いられているレーティングシステムで、全世界にいるチェスプレーヤーの強さを数値的に出せることで誰がどの程度強いのかがわかるようになっている。
ちなみにグランドマスターとはレート2500以上かつ国際大会で優秀な成績を3回修めると獲得できる称号である。(余談だが、現在世界のトップは2800台後半、日本のトップは将棋の羽生善治名人でレートは2400台である。)
イロレーティングの計算方法については今回は割愛するが、イロレーティングではレートが200違う(例:レート1700のプレイヤーとレート1500のプレイヤー)とレートが高い方の勝率が約76%になることがイロレーティングの基本となる。
イロレーティングではレート差によって勝率が決まっているので、レート差を見ればどれだけの勝率で勝てるかが見えるという利点がある。実際イロレーティングとexcelデータを使って色んな物の強さを数値化しようというサイトは多くあるのだが、個人的には将棋倶楽部24で用いられている簡易化されたイロレーティングでも十分ではないかと思ったので、今回実際に簡易化されたイロレーティングを用いて計算を行ってみる。計算式は以下の通りだ。
24局目まで 新R=旧R+((相手R-旧R)±400)/(N+1)
25局目以降 新R=旧R+((相手R-旧R)±400)/25
ここで、Nは通算対局数。±は勝った場合+負けた場合-の意味。
(24局目で初期式と通常式の形は一致する)
(参照:http://www.shogidojo.com/dojo/rating/)
上の式を見て、レート差400以上あると勝ってもマイナスになるじゃないか、と数字に詳しい人なら気づくかもしれないが、将棋倶楽部24では勝てばどんなレート差でも1はレートが増えるように設定されている。
上の式を使って実際に計算をしてみよう。例によって登場人物は
田口:レート1700 試合回数 100
床波:レート2200 試合回数 50
谷津:レート1400 試合回数 20
野口:レート1500 試合回数 0
とする。
例1: 勝ち 田口・床波ペア 負け 谷津・野口ペア
田口・床波ペアの平均レートは(1700+2200)/2=1950
谷津・野口ペアの平均レートは(1400+1500)/2=1450
なのでレート差は500である。レート差400以上の場合は勝ったペアが1だけ増えるように
するため、4人の試合後のレートは
田口:1700 + 1×1 = 1701
床波:2200 + 1×1 = 2201
谷津:1400 – 1×25/20 = 1399 (小数点以下四捨五入)
野口:1500 – 1×25/1 = 1475
となる。野口は初参加なのでレートの変動が大きい。
例2: 勝ち 床波・谷津ペア 負け 田口・野口ペア
床波・谷津ペアの平均レートは(2200+1400)/2=1800
田口・野口ペアの平均レートは(1700+1500)/2=1600
なのでレート差は200である。4人の試合後のレートは
床波:2200 + (-200 + 400)/25 = 2208
谷津:1400 + (-200 + 400)/21 = 1410
田口:1700 – (200 – 400)/25 = 1692
野口:1500 – (200 – 400)/1 = 1300
となる。
将棋倶楽部24のレート方式の特徴である、始めたばかりのうちのレート変動が大きいというのは個人的にはかなり気に入っていたが、実際に計算してみると野口の負けた時のレートの下がり方がおかしい(勝てば面白いくらい上がるわけだが笑)ので、新規参加メンバーの平均的な強さが当団体の平均的なレベルであるばこの計算式は力を発揮するが、新規メンバーに高校生が多い当団体ではこのシステムを用いるとレートのデフレが起きるかもしれないと思った。(例2の4人のレートの合計が大きくマイナスになっている+新規参加メンバーの勝率は5割超えないだろうという推測より)
また簡易化されたイロレーティングは計算が簡単というメリットはある反面、レート差が大きい試合ではあまり力を発揮できないというデメリットもある。例えばイロレーティングではレート差400の期待勝率はレート上位者が約91%だが、簡易化されたイロレーティングではレート上位者が約97%勝つ計算になる。これはイロレーティングが計算に指数を使っているのに対して、簡易化されたイロレーティングでは1次式しか使ってないことに起因する。将棋倶楽部24ではレート差200以上あるような対局は少ない(レート上位者が拒否する事が多い)ため問題ないが、常連メンバーペア対高校生ペアという実力に差がある試合も多く行われる当団体ではこの点も修正した方が良いと思われる。
・・・このように問題点をあげていったら段々普通にイロレーティングを使った方が良い気がしてきた。最初は初期変動が大きいのはメリットだと思っていたが、実際に計算するとレートのデフレを招く要因になりかねないのは誤算だった。
書いているうちに問題点に気づくというグダグダな感じになってしまったが、個人的には書いているうちにレーティングに関しての見識を深めることができたので勉強にはなった。いずれ本ブログでイロレーティングを使った例をいくつか紹介したいと思う。