前回の投稿で、もう少しで24三段のレートが近いと書いたが、同じくらいの実力者に2連勝すれば三段になれるレートだった。
そして3日ぶりに指すわけだが、今日の一局目がこちらの先手で、「2手目3二飛戦法」に相手が24三段とは思えないくらいの快勝だった。2月8日にブログを投稿する際に三間飛車対策を激指先生と検討したが、その経験が活きたと思う。
その将棋は田口の実力以上の鋭い寄せが炸裂した(というか相手のかけた技が完全な暴発だったのだが)ので載せようかと思ったが、棋譜を保存するのを忘れてしまい、思い出そうと思っても相手の序中盤で不思議な手が多くて思い出せないこともあり断念した。
あと一勝で24三段復帰とあり次の一局は気合を入れて臨んだ。
図1:5手目 4手目△9四歩に対し、端を受けられる
4手目△9四歩は前回の投稿でも書いたが、ダイレクト向かい飛車を志向した一手である。それに対して5手目に▲9六歩と受けて来られた場合はダイレクト向かい飛車にするとやや損なので、別の戦法を目指すことになる。2月は2月14日の投稿にもあるようにノーマル四間飛車を指していたが、いかんせん勝てないので3月に入ってから△8四歩と突いて、田口の本領である「横歩取り」を採用している。
田口がアマ四段を取ったときに将棋センターで同じく四段の人たちと6局対戦して3勝3敗で四段を頂いたのだが、その3勝は全て横歩取りの将棋である。横歩取りだけで四段を頂いたようなものなので、他の戦法でももう少し得意戦法と言えるような戦法を増やしていきたい。
図2:24手目 後手、8四飛・5二玉型
最近のプロの横歩取りでは大半は8四飛・5二玉型である。少し前までは8五飛・4一玉型が多く、その中の「新山崎流」と呼ばれる変化は自分なりにかなり研究した記憶がある。最初に24三段突破した時もその戦型がプロ間で流行っていたこともあり24で指してくる方も多く、勝ち星を荒稼ぎできた。
が、今では先手が新山崎流の変化にせず、その戦型になることはまずない。横歩取りはプロの研究速度がやたら早く、定跡がコロコロ変わるのである。なので、読みの力はイマイチだけどプロの棋譜を追っかけまくる田口みたいなのが勝ちやすく、プロの棋譜はあまり見てないけど毎日詰将棋解いて終盤力鍛えているみたいな人には向かない戦法だと思う。
図3:39手目 相手の消極的な中盤で有利になるが…
この2手前に、▲8七歩という「これは咎めなければ!」という手を指されてのこの局面。この局面は有利だと思っていたし、実際ソフトに解析させると後手有利という評価値が出る。しかし、ここでもたもたすると先手の形が良くなるので後手は上手く攻めを繋げなければならない。その手順が浮かばず、取り敢えず△3七歩▲同銀△2五飛とぶつけて、▲同飛なら△同桂が銀に当たるのでどうか、と思っていた。実戦は飛車がぶつかり合うもどちらも交換したがらない不思議な展開が続いた。
しかしその後ソフトとの検討では先手から飛車交換後、冷静に▲2八銀と引かれると意外に手がなく、後手としては3二にいる金が浮いているので何かにつけて3筋に飛車を打たれる筋を警戒しなければならない展開になり、先手ペースになる危険性があった。
正着は△3七歩▲同銀に△1五角で、ソフトも指摘している上に定跡書(※1)にもこの攻め筋が紹介されているのでほぼ間違いないだろう。横歩取りの将棋に限らないが、攻めのパターンを覚えておくことは棋力向上に大いに役立つ。
図4:50手目 強烈すぎる4五の桂
正しい攻め方ではなかったが、先手としても指す手は難しい。なんといっても後手は桂馬を4五に跳ねただけで先手玉はかなり危険になっているのである。
先に結末を言ってしまうと、この6手後の56手目で先手は投了してしまう。それくらい危険な局面なので、▲3七歩成とギリギリの利かし(手抜かれる危険性もあるが)を入れるか、▲6六角と攻防に角を打って△5七桂を防ぐかしなければいけなかった。
が、気持ちは分かるが▲2一飛と指された。これが敗着で、以下△5七桂成▲同玉△5九飛(←激痛)▲6八玉△2九飛成までで先手の方は投了された。まだ指せば十数手かかるとは思うが、先手は金銀を取られながら詰めろをかけ続けられそうにも関わらず後手玉は金銀の連結がしっかりしているいい形なので攻防ともに見込みなく、投了も仕方ないだろう。
・・・というわけで56手という短手数であっさり24三段の相手に勝ってしまった。横歩取りの将棋は1手事故るとあっという間に勝負が着いてしまうスリリングな戦法で、この戦法でしか味わえない綱渡り感覚がまた面白いところである。
これでレートは1900を超えて、晴れて24三段復帰である。私の元いた研究室でコンピュータ将棋を研究してた先輩が24で三段だったので三段というのは私の一つの目標である。その目標が達成できたのは嬉しい。が、一回負けたらすぐに二段なので、これに浮かれてばかりもいられない。これからも棋力向上に精進したい。
※1 村田顕弘五段「現代横歩取りのすべて」 内容は有段者(というか高段者)向けだと思う。序中盤に関しては物凄く網羅されているので、読めば本局のようにネット将棋で同じくらいの棋力の相手を簡単にボコれてしまう。が、定跡書の中でも専門的すぎてかなり難しい方だと思うので、級位者や横歩取り指さない方にはオススメできない。