3月5日の将棋

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図1:16手目ダイレクト向かい飛車に対して先手時間差▲6五角

将棋の調子の周期というものを自分なりに考えるのだが、4パターンあると思う。

1.勝率もよく内容も伴っている(と指した本人が思える)状態

2.勝率はそこそこだが、内容的にはあまり満足いかない(相手のミスで勝てたと思う)状態

3.内容的には満足いくものが多いが勝ちに結びつかない状態

4.内容も勝率も最悪の状態

2月は3の状態だったが3月に入り2の状態になってきた。そのため、内容的にブログを投稿したくなるような将棋を指せてなかった。今回も終局後満足いく内容ではなかったが、やっとダイレクト向かい飛車の将棋になったので投稿しようと思う。

ダイレクト向かい飛車とは角交換した後に6五角の隙があるにもかかわらずいきなり向かい飛車にしてしまう戦法である。この戦法は佐藤康光九段がNHK杯戦で森内九段に指されてプロ間で注目されるようになり、年間で斬新な戦法を編み出した棋士に贈られる升田幸三賞も受賞されている(と記憶している)。

本局は飛車回った直後に▲6五角と打つのではなくお互いに玉を上がってから▲6五角と打つ戦型を相手が選択された。私は今日までこの局面をソフトに読ませたことは無かったのだが、ソフト的には若干後手持ちのようだ。最近のプロ間ではダイレクト向かい飛車相手に▲6五角と打つ手は減少傾向にあるが、馬を作れても局面評価がプラスにならないのは意外だった。

図1からアマチュア間では▲4三角成といく手が多く、馬を抑えこむのはアマチュア棋力では難しいので田口もその手に対して勝率は決して良くないが、実はプロやソフト的には▲4三角成は馬を作っても使いづらいので▲同角と7四の歩を取る手の方が優る。

しかし、今回相手は▲7五歩という田口の見たことない手を指してきた。ソフトは3番目に指摘した手で、▲4三馬より優ると激指先生は評価している。対局中はダイレクト向かい飛車を数多く指している私が見たことない手だから大したことないだろうと最初は楽観していたが、考え方として甘かったことに気付かされる。

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図2:31手目 7四歩をなかなか取れない!

図1から先手は▲7四歩を伸ばしてきたが、これを取り払うことができれば後手良しになる。そのため、田口は銀冠を作って取りに行こうとしたが、その手順が良くなかった。先に高美濃の形を作るべきだったようで、また先手の▲6六銀という手が△8八角は怖くないですよ、それより7四歩を守る方が重要ですよ、という一手である。ちなみに△8八角には▲9八香△9九角成▲7九玉で受かっている。

ここから△8四歩とあくまで銀冠から7四の歩を取りに行く手を目指したが、▲9五歩と攻め立てられてきた。本譜はやや苦しくなってしまった。

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図3:42手目 銀交換後の相手の好手

桂は端に跳ねさせられ、銀交換されて苦しそうではあるが、▲6五同角と来てくれれば角をいじめて、後手にも楽しみがありそうと思っていたこの局面、激指先生曰く、この手以外ない、という手を指されてしまう。その手が分かるだろうか。

正解は▲9二歩。単に同角だと例えば△6四銀のような手で角の行き場が無いが、先に▲9二歩を利かすことで今度△6四銀には▲9二角成とできるのだ。何か香車を取られている間に良い手を指したかったが30秒では思い浮かばず△同香としてしまったが、おそらく悪手。▲6五角とされて先手が有利になっていると思う。

▲6五角に△8八角として香取りに行ったが、それなら▲9二歩のところで指したほうが良かったように思う。本局最大の反省点である。

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図4:50手目 異形の好手△9一歩

図3のところでお互いに香車を取り合っての攻め合いは先手に分があったと思うが先手は一回▲9六香と穏やかな手を指してくれたので、それならと△4五歩も利かしてから△9一歩と受けた。

対局中は「香取り受けただけの歩ってなんだよ…」と指してて悲しい気持ちになっていたが、意外にも激指先生は高い評価を示してくれた。この好手もあり、どうやら図3の局面から図4の局面になる間に形成は逆転していたようだ。

自陣の四隅に歩を打つ手が好手になることもあるのだなぁ、と将棋の奥深さを改めて思い知った。

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図5:63手目 攻めの好手と受けのミス

改めて棋譜を激指先生に解析してもらうとこのあたりではお互いソフト最善手が多いことに驚いた。内容が悪いと思っていたがそうでは無かったかもしれない。

しかし、先手の▲9四歩からと金を作る手は悪手のようで、手順に△8五桂と跳ねて先手玉のコビンを狙える形になった。

図5から先手のと金に構わず△7六歩とと金の王手を見せて▲5九玉という手に▲3五歩という手が「玉は包むように寄せよ」の格言に則った好手だったようだ。

先手は受けも難しいと見て▲8三と金と来られた。これに対しては△6二金と寄れば5五の馬が自陣によく利いていて後手がはっきり優勢だったのだが、田口は△同金と指してしまう。ここで先手は同金と指してくれたので後手がはっきりと優勢のまま将棋は進んだが、▲6三金(!)△同玉▲8三角成と、手順に馬を作る攻めがあり差が詰まる危険性があった。

せっかく好手を指しても一手の悪手でフイになってしまうのが将棋の怖いところであり面白いところでもある。

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図6:96手目 気持ちの良い王手銀取り

局面は後手勝勢で先手は▲4二銀と飛車を取ってきたが、待ってましたの△1五角である。先手は▲3七香と受けてきた。

ここで△4二角と銀を取るのはそれでも勝勢には違いないが性格の悪さを疑われる危険性がある。△3七同馬と決めに行くのが後腐れのない勝ち方と言えるだろう。以下、▲同金△同角成▲4八飛△2九飛の局面で102手をもって先手が投了した。△1五角打った時には気づいてなかったが、そんなに難しくはない詰みがあったのだ。▲3七香以外の受け(例えば▲4八香)でも激指先生曰く詰んでいたみたいだが、そう指されていたらそれこそ△4二角と指すつもりだった。

本局は指していて筋悪の手を多く指してしまったような気がして内容は良くなかったと思っていたが、激指と検討していると意外と上手く指していた将棋だったんだなと気付かされた。相手はダイレクト向かい飛車に独自の対策を持っている好敵手で、自身のダイレクト向かい飛車の経験値をほとんど活かせなかったが中盤以降は上手く対応できたと思う。

久しぶりに24で三段のレートが近づいてきたのでなんとか復帰できるよう精進したい。

 

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